よくわからないという心のダメージ、「コロナ疲れ」から健康を守る2ステップ。

前代未聞の新型コロナウイルスという感染症のパンデミック(世界的大流行)。あそこに行けば感染するのか、あの人は感染しているのか、いやその前に自分自身はどうなのか。感染したら、一体どうなるのか。わたしたちの全員が、これまで以上に未来予測できない世界に生きており、この不確実性こそが心にダメージを与えることで「コロナ疲れ」や「コロナ鬱」を誘います。そこで、「コロナ疲れ」から心と体の健康を守る2ステップについて、バークレー校の研究者の意見やマインドフルネスの考え方を参考に解説していきます。

「コロナ疲れ」を誘う、不確実性という心理ストレス。

あらゆる占いのたぐいをはじめ、天気予報に株価予測が巷に溢れているように、わたしたちには未来への手がかりを追い求めるという習性が備わっています。

古代インドのヴェーダ哲学でも、人間が「こうであるはずだ」という信念を抱える原因は、「無知への恐怖」とされています(1)。

思想家のエックハルト・トールもいうように、私たちの心は「知ること」「理解すること」「コントロールすること」を目的にしているからです。すぐに「つまり、こういうことだ」と決めてしまいたいのです(2)。

例えばある研究によると、仕事がどうなるのかはっきりしないときのほうが、実際に仕事を失うときよりもハッキリとした健康被害を与えるそうです。コンサルタントのディビッド・ロックによると、確信が揺るがされると神経学的には身体が攻撃されたのと同じ痛みを感じるのだとか(3)。

たしか私が女性誌の特集で浮気調査の探偵事務所を取材したとき、探偵さんもこうおっしゃっていました。

「依頼者は、パートナーの浮気の証拠が見つかると、ホッとされます。たとえそれが恐れていたショックなことでも、です。はっきりわからないことから事実に変わった時点で対策が立てられ、次の行動を取れるようになるからです」。

つまり私たちは、「先が見えない」という共通の苦痛を抱えています。

コロナ疲れやコロナ鬱の症状は、心や身体に現れる。

それは、朝起きる気がしない。やる気が出ない。体が重い。頭痛がする。微熱がある。下痢気味だ…。

気分が落ち込む、将来が不安、憂鬱だという「コロナ疲れ」や「コロナ鬱」と呼ばれるような心の疲れから、体調にもこのような異変が現れているかもしれません。ホリスティックや心身一如という言葉がありますが、私たちは心と身体と魂の総体だからです。

ホリスティックについての記事:病気が贈ってくれた、ホリスティックの真の意味とそのギフトについて

とはいえなんとか暗中模索して、行動しないと! と、気をふるい立たせます。しかし、それがかえってアダとなる場合もあるのです。

無理して行動しても、さらなる不安を誘う危険が。

思想家サティシュ・クマールは、「不安から行動を始めてはいけません」といいます。心理学者たちも不安から起こる行動は無意識の不幸スイッチが入った視野が狭いものである可能性があり、新たな不安の火種を誘いかねないと助言します。

では、どうすればこの思いがけない事態のなかで最適な行動をとるために必要な、前向きで柔軟な心を育めるというのでしょう?

これに対する答えとして、カリフォルニア大学バークレー校の研究機関「Greater Good Science Center」の上級研究員であるクリスティーン・カーター博士は、先行き見えない事態に対処するコツとし、以下の7点を挙げています。




「コロナ疲れ」「コロナ鬱」と向き合うための7つの対策。

  1. 抵抗しない
  2. 自分に投資する
  3. 健康的で、ほっとできるものを見つける
  4. 自分の考えの全てを信じない
  5. 注意を傾ける
  6. 救い主を求めない
  7. カオスに意味を見いだす

不確実な事態のなかで鬱に向かいやすい人は、万全ではない自分を責めてしまうような、責任感が強く几帳面な人が多いと考えられています。

 

そこでこの7つのアドバイスから「コロナ疲れ」対策として汲み取りたいメッセージをまとめて、2段階にすると以下です。




step1:よくわからない自分を大事にする。

第一のステップは、“よくわからない自分を受け入れて、大事にする”こと。

 

「注意を傾ける」というのは、不確実な事態を辛いと感じる自分の気持ちに意識を向けるということです。荒れ狂う波をただ見つめるように、責めない、罰さない、ムチ打たない

 

「抵抗しない」というのは、その気持ちを否定しないということです。体を休めたかったり、心をゆっくりさせたいという気持ちをありのまま受け容れること。

 

step2: 変えられないものと変えられるものを見極める。

そして第二のステップは、私が行き詰まったときに思い返す「ニーバーの祈り」からの智恵です。これは別名 平穏の祈りとも言われ、以下です。

神さま、変えることのできないものを受け入れる心の静けさを与えてください。
変えるべきものを変える勇気と、
そして、変えられないものと変えるべきものを区別する智慧を与えて下さい。

 

つまり今起こっていることの変えられないことは受け入れる。心を健康に保つために、日々直面するよくわからないことをそのまま受け入れる大切さは、マインドフルネスの実践でも語られます。そして「こうなってほしい」「こうであるべき」という思いはひとまず置いて、今出来ることのなかで、ラクになれること、どうありたいのかを自分に問いかけます。そして、それを実行してください。

 

もっと出来るはずだ、と「自分の考え」に従って、「自分の心」が抱える不安や辛さを無視したり、躍起になって状況を改善しようと行動することは、自分をコントロールできているようにも見えます。

けれども、それがいつも出来るわけではありません。大前提として無理しているわけだし、どうにもならないことだってあります。ありのままの自分を赦しましょう。

 

水がコップに溜まっていくように、ストレスが心や体に溢れ出ることがあって当然なのです。とにかくしんどいときは、変えられないものを無理にコントロールしようとせず、自分を大事にしましょう。

 

それは逃げではありません。むしろその逆です。全体像を観察して、最適な行動をとるために「自分を痛めつけない」という積極的な自己投資をしているのです。

 

自分を大事にした分だけ、人のことも大事にできるという鉄則。

自分を大事にすることは、自分勝手なことではありません

それは自分自身に危害を与えないということ。自分の内の世界を大切にすると、外の世界も大切にできるようになります。

 

それは、誰か「救世主」がやってきて、この事態をすべて解決してくれると願い、それが敵わないと相手にイライラしたり、批判したりと人任せにせず、自分で心と体のケアをするということ。

 

私たちは自分に優しくできた分、相手にも優しくできるようになります。自分を大事にすることは、結果的に全体を大事にすることにつながっていきます。

 

GoToするなら自分の心に潜る、リフレッシュの旅へ。

心と体は繋がりあっています。例えば、心が堅く緊張しているときは、お気に入りのアロマオイルを垂らしてゆっくりお風呂に入って、体を温めながら心も一緒にほぐしていくのもいいでしょう。

 

「ほっとできるもの」は人によって違いますから、心のリフレッシュの旅に出ましょう。

柔軟になれば、より事態を自然体で受け止められるようになっていきます。

 

この旅行は、遠出する必要もありません。お金もかかりません。今ここで始められます。

そして、これは自由に動き回れないという前代未聞の「カオス」状態だからこそ向かえる自分の心に潜る旅でもあります。

 

参考

1.ドナルド・ロフランド著、上浦倫人訳『こころのウイルス』(英治出版)

2. エックハルト・トール著、あさりみちこ訳『世界でいちばん古くて大切なスピリチュアルの教え』(徳間書店)

3.Rock, D, 2009. Your Brain at Work:Strategies for Overcoming Distraction, Regaining Focus, and Working Smarter All Day Long, HarperBusiness.