アメリカ禅修行。あぁ、グラノーラ

アメリカ禅修行、グラノーラで乙女心再熱。

わたしがアメリカのサンタフェ市にあるウパヤ禅センターを初めて訪ねたとき、朝食にグラノーラが出てきて衝撃を受けました。「なんておしゃれで、ファンシーなの!」と。

東京で女性誌の編集者をしていたときに、Oyatsuという連載を担当していた頃のオトメゴコロも再熱。禅仏教で修行といえば質実剛健なイメージがあって、とはいえアメリカだから「米のおかゆに漬物」は無くても、「薄い水みたいなポリッジにまさかピクルスとか?」と覚悟していたので予想外の嬉しい展開でした。

それは市販のものよりもちょっとダークめに焼かれたこげ茶がかったグラノーラ。糖分にメイプルシロップが使われているために、優しく品のある甘さがします。それにローストされたオーガニックのカシューナッツ、アーモンド、クルミ、グレープシード、ひまわりの種にココナッツスライスがたっぷり入ったお皿が添えられます。洋梨のフルーツソースと、普通のヨーグルトとヴィーガン対応のヨーグルトも。木のカゴに可愛らしいブルーの布ナプキンがあしらわれ、そのうえに立派なゆで卵の山がキレイに積まれています。

そして半年後にはその禅センターで暮らすことになって、典座(てんぞ)という料理長と一緒に料理を合計5か月間作り続けることになりました。そこでフルーツソースは、大きなゲストを迎えた合宿のあとに残って熟れきってしまった果物を有効活用するレシピだったこと。ナッツがそれぞれのお皿にわけられていたのは食品アレルギー対応のため、そして作り置きができるグラノーラはやすみ明けの料理担当が朝食準備の負担を減らせるようにと配慮した献立だったことを知ります。

2歳児のお風呂大の特大ボウルで。

ところでわたしがグラノーラを作る当番になったとき、典座のクリフトンが「いつもと違うやつを作ってみよう!」と思い立ちました。だったらスティーブ・ジョブズも修行した別の禅センター、タサハラ禅センターのレシピで作ってみようよと盛り上がって、わたしたちは2歳児が沐浴できるぐらいの特大ボウルを準備してやる気満々。ちなみにクリフトンは物理学者だったけど思うことがあって1年半ほどこの禅センターで料理を作り続けていました。クリフトンはにせフランス語が上手だったので、わたしは時折それに韓国語のモノマネをして応戦したっけ。

クリフトンは今は禅センターを出て、コロラドでスキーを教えているそうです。

さて英語のレシピを読むのはわたしにとっては英文読解です。しかもよく知らない単語がたくさん。「パウンドって何グラムのこと?」「シマーってどういう意味?」「ねぇ、モラセスってなに?」という具合に。携帯電話が使えないから、単語をGoogleで調べるわけにもいかないのです。ひとつひとつみんなに教えてもらって、モラセスは「あー、冷蔵庫の奥にあったかも」と一緒にキッチンに立っていたモリーが探し出してくれました。

初めて見たモラセスは、なんかものすっごいどす黒い色。舐めると独特のクセがある、ミネラルたっぷり濃厚な黒蜜みたいな味がします。砂糖を作るときに取り除かれる副産物なのだとか。レシピ通りにモラセスをドバドバと投入していたら、クリフトンが焦りだして「アヤ、それは高価なものなんだよ!そんな一気に使ったらもったいない!!」と2瓶めで典座ストップがかかりました。

捨てられるはずのものなのに砂糖よりも高いの? ときどき世の中の値段のつけかたは不思議だなぁと感じます。この世のシステムは道元が説くようには、在るように出来ていないのかな。でも仕上がったものはいつものグラノーラより深みがあってしっかり甘く、なるほどリッチな味になりました。そしてウパヤ禅センターでこのグラノーラが出されるのは最初で最後となりました。

手に入らないものは作ったら楽しい。

禅センターでの暮らしで学んだことのひとつに、手に入りにくいものがあってそれが欲しいなら作ればいいということ。みんな木の実をあしらってカードを作ったり、アップルビネガーをシャンプーにしたり、コンブチャ(紅茶きのこ炭酸ドリンク)を育てたりと創意工夫していました。時間や手間もかかって効率的ではないし、買うよりも不恰好なものが出来上がったりするけど。でも自分の手を使いながら一心になって創意工夫する体験は何ものにも変えがたい満足感があります。

わたしも日本に帰国してなかなかシンプルなグラノーラが納得のいく価格で見つからないので手作りしています。油やお砂糖の種類を変えてアレンジしたり、毎回が実験のようで楽しいですよ。

マキワリ流 混ぜて焼くだけグラノーラ

(作りやすい量 だいたいひと瓶分)

有機オーツ麦 300g

グレープシードオイル 75g

メイプルシロップ 50g

黒砂糖 15〜30g (好みで)

有機アーモンド、くるみ、白ゴマ適量(わたしはこれでもかと入れる)

カルダモンパウダー、シナモンパウダー適量(わたしはこれでもかと入れる)

1.材料を全部混ぜる。

2.オーブンシートを引いて薄くまんべんなく1をひいて170度で15分。

3.2をかき混ぜてまた薄くまんべんなくひいて170度で15分。

オーブンの中でそのまま冷ますほうが、グラノーラが湿らずカリッとするように思います。