始まりは、タヌキでした。
東京23区、駅から歩いて15分程度という都会で、まさか野生のタヌキと遭遇するなんて。現在暮らす山伏ヨーコちゃんが家主のマキワリハウスは、庭というよりむしろ林の中に建つお家。朝はヒヨドリに窓を突かれて起きるところから始まり、野良猫の黒猫とオレンジ色のシマ猫が連れ立って朝ごはんを催促に来て、と人間よりも動物とのふれあいがメインになっていましたが、タヌキまで!
朝ごはんのりんごを1切れポーンと放り投げたら、綺麗な毛並みのタヌキはシャクシャクと音を立てて食べました。その様子があまりに可愛らしいので、もうひとつ放り投げ、ガラス窓を隔てて同じ朝食をいただきました。
翌日もタヌキがやってきて、黒猫と命がけのかけっこをやっていました。そこで試しにりんごの皮や芯を庭の決まった場所に置くことにしました。それも鳥たちとシャクシャクと食べていたので「生ゴミが減るのもいいなぁ」とまた嬉しくなりました。
そのとてもほっこりとした同じ日の夜中のこと。声にならない女の人の大声が聞こえました。数分たっても止まず、どうやら家の周りをぐるぐる回りながら叫んでいるようなのです。よく耳をすませてみると「助けてー」「家事だぁーー」のような言葉のようです。それは大変だと思って、恐ろしい気持ちを抑えて向かうことにしました。
一階に降りると今度はなにやら「わたくしは、グルと共にいます!」と叫んでいます。何か危ないなと思って電気をつけて家の中から様子をみることにしました。そして玄関の電気をつけると、急に静かに。そこでその夜はもう外に出ないことにしました。
翌日外出をして帰ってくると、向かいの家のドアが壊されてこちらに投げ飛ばされていました。そして玄関には大きなリュックとコート、紙袋にスニーカー、家の裏手に揃えられた黒い革靴、お風呂の窓あたりに脱ぎ捨てられた服、その先に脱いだ下着が放置されていました。どことなく家の間取りを知っているようなその置き方に恐ろしくなって、すぐ110番しました。その後でヨーコちゃんにも連絡しました。
110番して30分ぐらいして近所の交番からおまわりさんがやってきました。どうやらその女性は警察官に付き添われその朝病院に行ったそうです。詳しく聞いても「早番の人間がやったことだから、自分はわからない」の一点張り。巡回などはしてもらえないそうで、侵入してきた女性が今も病院にいるのか、そうではないのか、どこに住む誰なのか、家族がいるのか、などどの質問に対しても身内ではない限りわからないと明かされず、こちらができることといえば何かがあったときにまた110番するしかないそうです。こうやっていろんな大きな事件の火種のような小事件が今まで放置されてしまったのだろうなとなんだか思いましたね。
たくさんの放置物はまず私が権利放棄書に署名をして初めて、警察が持っていくことができるそうです。そこですぐにサインしました。後から来た2名の警察官たちは交番のおまわりさんより頭がキレる人たちで、リュックの中身を即座に確認しました。保険証や大量のティッシュに加え、『もののけ姫』のDVDが出てきました。それを見て不謹慎にも警察官の人と私はクスリと笑ってしまいました。というのも、マキワリハウスはもののけ姫気分になるにうってつけのスチュエーションだからです。その警察官の人が「これから変な声が聞こえたら絶対に外には出ず、すぐに110番してくださいね。いつでもなんでも伺いますから」と言ってくださいました。交番のおまわりさんがこの人たちだったらいいのに...。
アメリカにいたときは、奇声や銃声が聞こえるのはある意味日常茶飯事でした。日本に帰って数ヶ月して、もはや平和が当たり前になってビビっている自分がいました。タヌキは歓迎するのに、知らない人が侵入したらものすごく嫌な気分がする自分のナワバリ感覚にも気がつきました。翌日は家を清め塩で掃除し、家の周りに塩をしました。この聖なるマキワリハウスの家守りとしてさらにパワーアップしなければ!
ところで自分の持つ波動の幅が変わるとき、良いものも悪いものも今まで出会わなかったようなものと遭遇するのだそうです。経験上それはその通りだと思うので、では次にはどんな良いほうのハプニングがやってくるんだろう!ビクビクしつつもちょっとワクワク。
ポジティブすぎますか? でもそうやって私、今までやってきたんです。