愛と幸せに溢れている高次元の自分、ハイヤーセルフ。そんな高次の意識と繋がり、自分の能力を最大限にして、自由や充足感のなかで生きたいとは誰もが望むことです。けれどもハイヤーセルフとうまく繋がれずに、苦しいまま・・・。それは無意識の心の影、シャドウのせいかもしれません。シャドウとは、自分でも気づいていない、認められていないあなたの一面のこと。でも自覚できないのに、どうやってそれを解放させられるというの? その効果的な方法が、インテグラル理論の開発者のケン・ウィルバーが生み出した3ステップ「3-2-1 シャドープロセス」です(1)。深層にある怒りや悲しみに気づき、受け容れ、解放させる3ステップをマスターすれば大丈夫。無意識の自己否定に邪魔されず、あなたの可能性を開いて、望ましい現実を実現させていきましょう。
目次
心の影 シャドウとは?
心理学者カール・グスタフ・ユングが提唱した分析心理学(ユング心理学)の元型のひとつ、シャドウ(シャドー)。自分から切り離し、排除し、拒絶し、隠している心の影のことです。解放されずに心の奥深くでくすぶっている恐怖や悲しみ。表現されないけど確実に存在するシャドウは、他人という鏡を見たときに着火されます。メールの返事が遅い恋人を「自分勝手」と感じたり、口うるさい上司のことを「人を認めない」と思ったり…。それは、自由に振る舞いたい自分を「ダメだ」と押さえ込んでいたり、または「自分は無能なのでは?」という可能性を直視するのが怖くて、相手に自分の認められない一面を鏡のように写しているだけなのかもしれません。これを投影と言います。他者に投影されたシャドウは無意識なので、それが自分の一面と自覚できません。
嫌いな自分を赦せば、愛が叶う。投影を外し、人間関係のモヤモヤを一掃する心理学。
ズルくても弱くても大丈夫。心の影(シャドー)を認めて、嫌な人がいない世界へ。
ハイヤーセルフとの繋がりを阻止するシャドウ。
一方、私たちの無意識下には、ハイヤーセルフという高次元の意識もあります。ハイヤーセルフは通常意識の自分以上に私たちのことを理解し、誰よりも尊重し、大切に思い、無条件に愛してくれる存在です。ところでハイヤーセルフに繋がっていないときの、通常意識の私たちは、今まで見たり聞いたり経験してきたことだけで現実とはこういうものだと理解しています。それはあくまでも過去の経験に基づいた制限的な観念。その枠に当てはめた、「これぐらいはできる」「これは無理だ」という自己像(セルフイメージ)に基づいて行動することで、実は本来の力を十分発揮できていません。本当はもっと可能性があるのです。
ハイヤーセルフは私たちの能力を出し切って、心・体・魂という全体を生き、魂が設定してきたミッションを果たすように促してくれます。その原動力は、愛と自由と幸せ。ユングはこの過程を「個性化」と呼びました。心理学者マズローでは、自己実現。そしてそれが自己を超えた命の源と一致したときの状態を、自己超越と呼びました。
対するシャドウの原動力は、恐怖と悲しみ。ハイヤーセルフとまったく違うエネルギーのシャドウと引き合った状態だと、異質のエネルギーであるハイヤーセルフとは繋がれないのです。そこでシャドウを克服するためには、それが自分の中にあると認めること、そしてそれが存在するための理由があると受け容れること。そしてそこにどんな観念があるかを理解し、ポジティブな形で利用する必要があります。
ケン・ウィルバーが生み出した3ステップ「3-2-1 シャドープロセス」。
そこで、インテグラル理論の開発者ケン・ウィルバーが生み出したのが、「3-2-1 シャドープロセス」。心の奥底にある怒りや悲しみというシャドウに気づき、受け容れ、解放させるための3ステップです。これを行うことで今まで自分が悩まされていた人や現実が解決したり、そこから前ほど大きな影響を受けなくなったりします。
(1) INTEGRAL LIFE PRACTICE [ケン・ウィルバー ]
影(シャドー)ワークの詳しい説明や例のほか、体(ボディ)、心(マインド)、精神性(スピリット)を統合的に癒し、意識次元を高めるためのワークが凝縮された素晴らしい一冊です。
ステップ1 不安や怒り、悲しみ、動揺を抱かせる対象と向き合う。
人・状況など、ネガティブな形で動揺させるものを日記帳などに書く。「彼」「彼女」「彼ら」「それ」などの三人称の代名詞で生き生きと描写する。「こんなふうに思うなんて私って人間が小さい」など自分を裁いたり、「そんなに大したことではない」と過小評価しないこと。
ステップ2 対象に話しかける。
「あなたは誰?」「私に何を言おうとしているの?」「何を求めているの?」と問いかけながら、自分とその対象との掛け合いをする。書いてもいいし、口に出してもいい。自然に展開していく会話を受けとめる。
ステップ3 対象になる。
これまで探求してきた対象になって、思い浮かぶ言葉を書きとめていく。あなたを動揺させた対象者から見た、あなたを含めた現実を眺めて見る。対象者として「私は〜です」と断言して締めくくる。これによって、排除してきた現実の一側面を認めることになり、対象に投影された自分のシャドウ、疎外されてきた感情や衝動を自分の一面として捉えることができ、自己統合が可能になる。
実際にやってみよう!「3-2-1 シャドープロセス」のエクササイズ例。
(例)ステップ1 対象と向き合う。
佳奈は28歳の会社員。3か月前から同い年の勇人と付き合っている。大学院卒のエンジニアの勇人は英語も堪能で、専門家としてのスキルを使ったボランティア(プロボノ)を行っている。週末には時間を見つけて、医療分野の支援を行うNPO向けのソフトウェアを開発する支援をしている勇人。そんな彼のことを素敵だと惹かれるいっぽうで、自分が話せるのは日本語のみ、ITもよくわからない、ボランティアもしていない、特別なスキルもない…。比較すると見合わないような気がして、勇人って、私と一緒に居て楽しいのかな。彼はいい人だから言わないけど、本当はもっと他の人といるほうがいいんじゃないかなと不安になる。
(例)ステップ2 対象に話しかける。
佳奈…私と会いたいと本当に思ってる?
勇人…もちろん思っているよ。そうじゃないと誘わないし、会わないよ。
佳奈…でもプロボノの仲間と会うほうが価値ある情報が得られるんじゃない? 意見交換もできるだろうし。もっとスキルや知識を身につける時間が欲しいと言ってたよね。
勇人…確かにもっと本を読んだり、人脈を広げなきゃなと思っているよ。でも佳奈から学ぶこともたくさんあるよ。
佳奈…私は英語もできないし、ITもよくわからない。ボランティアもしていないよ。何が学べるの?
勇人…僕はついこの間まで学生だったから、同い年で6年社会に出ている佳奈から学ぶことが多い。君は気づいているよりいろんなことを知っているよ。企画書の効果的な書き方、言葉の選び方、説明したいポイントの絞り方、絵や図の入れ方、それに受け手によって言葉やデータを変えることなどぜんぶ佳奈から教わったんだ。それからご両親や友だちを大切にするところ。そういう僕が見失いがちな人生の土台、足元を着実に固めているところ、見習わなきゃって思ってる。
佳奈…私は世界が狭いから、あなたに何も言えないわ。アドバイスもできないし。
勇人…佳奈の世界は深いよ。だから自信を持って意見してもらいたい。僕はまだ学生気分が抜けていないところがあるし、夢を追うあまり、周りを疎かにするところもある。だからそんなときは、佳奈に気づかせてもらいたいんだ。
(例)ステップ3 対象になること。
「私の中には、目の前の世界を大切にし、そこから学べる能力がある」。
「私は自分の能力を認めて、それを発揮して、世の中と分かち合える人生を求めている」。
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これが、シャドウの欲求・願望・現したいこと。
シャドウを抱きしめ、ハイヤーセルフと繋がる力に変える!
3ステップで、「ダメだ」と見放していた自分の一面を受け容れることで、自分だけでなく、目の前の人の弱さもありのまま見つめられ、尊重できるようになります。シャドウのフィルターが外れることで、相手に対して不必要に遠慮したり、恐れたりすることなく、健全な関係が築けるようになります。それは不安や恐れのない、ハイヤーセルフと繋がったあなたが形作る現実です。無理にポジティブに振る舞おうとするのではなく、悲劇のヒロインのように犠牲者意識に浸るわけでもない。正直になって自分の心の影、シャドウを抱きしめ、気づいてない観念をあらわにしましょう。その観念の奥には、抑圧されている願望や欲求が隠されています。それをポジティブな形で利用すれば、ハイヤーセルフと繋がるための力になります。
Makiwari Radioで観ることもできます。