10年以内に、食糧危機がやってくる?!
未来の食卓を考えるとき、まるで『ドラえもん』の世界みたいにボタンひとつで健康状態にぴったりのごちそうがオーブンから出てくる。または、美肌に必要な栄養素が全て一口でまかなえて、食品ロスがゼロのアンチエイジングミールが発売される…。
そんなふうに機械がなんでもやってくれるような未来も、3Dプリンターの登場と、AIによるビッグデータの活用で遠くはなさそうです。
その一方で、2025年には食糧や水不足の恐れ、2030年には世界の急激な人口増のために食糧難、さらに食料需要が35%アップするという悲観的な未来予測(※)もあって、世界規模で食べ物が足りなくなるかもしれないのです。
(※)参考: National Intelligence Council, Global Trends 2025: A Transformed World, (November 2008). Global Trends 2030: A Transformed World,(November 2012).
食糧危機に陥ったときは、おそらくどの国も輸出を規制し、自国の食を優先するでしょう。ところで日本の食糧自給率はカロリーベースで38%、先進国でも最低レベルです(※カナダ255%、オーストラリア133%、アメリカ131%、フランス130%など)。そこで、明るい未来を創造するうえで、「食べること」を考えるのは最重要課題です。
(※)参考: 日本の食糧自給率(農林水産省)
そんな日本の「農と食を良くしたい!」と情熱をもつのが、20代の堀栄作さんと吉川京太さんです。コロナ禍に巻き込まれながらも、それぞれアメリカでの1年半におよぶ農業研修を終えて帰国した現在は、日本の農の可能性に向かい挑戦し続けています。
堀栄作さん(左)と吉川京太さん(右)。
ふたりの冒険には、未来の「食べる」を軸にした「働く」と「生きる」のヒントが一杯でした。そこで垣間見えるものは、競争社会・所有社会とは違った、協力、分配、連帯、安心からなる、新・旧両方が素晴らしい形でハイブリッドされた「楽しい」がベースにある社会の可能性。
耕作放棄地になるのはもったいない。
農業経験ゼロの大学生がお祖父ちゃんの畑を相続。
お祖父さんから継いだ兵庫県三田市の畑で雑草駆除する栄作さん。一人で行うコンパクト農から始める。
栄作さんは大学3年生を終えて休学し、JAEC(公益社団法人国際農業者交流協会)の海外農業研修に参加、約1年半をアメリカで過ごしました。でもそれまで農業への興味も経験も無く、漫然と毎日を過ごしていたそう。
栄作さん 大学生活もなぁなぁで、俗に言うパーティーピープルでした。2年生の半ばぐらいで、さすがにこのままじゃよくないなぁと将来と向き合い始めたんです。そんなタイミングでお祖父ちゃんを亡くし、その畑をどうしようかという家族会議になって。僕は三人兄弟の末っ子なんですが、誰も相続する気がなくて。それはもったいないと思って、じゃあやってみるかと。
日本の耕作放棄地面積は、38万6千ha。埼玉県より広い土地が農地として活用されないままになっています。特に栄作さんのように、土地を持っていても、人手不足などで放置せざるを得ない農家の割合が増加傾向(※2017年時点)にあります。食料自給率の低さを考えるうえで忘れてはならないのが、この所有される資産が社会のために活用されていないという現状です。
(※)参考: 耕作放棄地の動向と担い手への農地利用集積の促進(農林水産省)
さて乗り出したとはいえ、農業経験がゼロだった栄作さん。JAECの農業研修について知り、早速飛び込みました。しかしいきなり農業で、しかも海外。最初はカリフォルニア州にある小規模農家で研修を受けたそうですが、言語や文化の壁はどうだったのでしょう?