成功を決めるのは、才能よりも「やり抜く力(Grit)」というのはご存知ですか? NiziUやTWICEを生んだ敏腕プロデューサーのJ.Y.Parkさんは、NiziUメンバーの公開オーディションの際に「人生のあらゆる成功を決めるのは、才能よりもやり抜く力だ」と重視されていましたが、これは成功者研究でも語られるところです。そんな粘り強く努力できる力を「グリット(Grit)」という言葉で示し、やり抜く力の研究の第一人者が心理学者のアンジェラ・ダックワース博士。ダックワース博士が説く、三日坊主を克服して効率的にレベルアップする6つの法則をお話しします。
目次
才能より成功を決める、「やり抜く力(Grit)」とは?
もしタトゥーを入れるなら、日本語の”七転び八起き”にしたいという心理学者アンジェラ・ダックワース博士。グリット(やり抜く力)研究の第一人者である彼女が書いた『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』によれば、グリット(やり抜く力)とは、情熱と粘り強さを持って、最後までやり通す力のこと。
本書によれば、このやり抜く力が強い人たちは、あらゆる分野で成功を収めているのだとか。
例えば米国陸軍士官学校での厳しい訓練に耐えて卒業できるのは、試験の成績や体力測定や適性のスコアとは関係なく、このやり抜く力が強い人たちでした。
また、ビジネスパーソン、芸術家、アスリート、ジャーナリスト、医師、学者など各分野で成果を出す人たちも、最後までやり通せる人たちです。挫けそうになっても、諦めずに努力を続ける人たちの方が、ずば抜けた才能がある人たちよりも結果を出すそうです。
そして、ドイツの音楽学校でもっとも優秀なヴァイオリニストたちは、最上級レベルの演奏技術を得るまでに10年以上、延べ約1万時間かけています。生まれながらの天才に見える人たちですが、うまくできるまで何度も繰り返し練習したことで偉業に至ったのです。
ふと思い浮かんだのが、数多くの作品を生み出し、世界中で名の知られた作家の村上春樹さん。彼の長編小説を執筆中の日課は、朝4時ごろに起きて、4〜5時間書いて、必ずその後に1時間運動をするというもので、休日なく行うそうです。まさに努力と節制のたまもの!
三日坊主を克服し、効率的にレベルアップする6つの法則。
とはいえなんでも「やるぞ!」と決めて、それを続けるのってすごく難しいですよね。ダックワース博士が考える三日坊主を卒業し、レベルアップするための鉄則があります。なかでも一人で出来て、とくに有効と思うものを6つご紹介します。
1. 自分の好きと嫌いをはっきりさせ、モチベーションが続くものを選ぶ
アップル創業者のスティーブ・ジョブズもアマゾン創業者のジェフ・ベソスも「情熱を持たない限り、長続きしない」と好きこそものの上手なれと口を揃えます。
つまり「苦しくても、上達したい」「大変でも、やり遂げたい」という強い意欲が、続けるための最大の動機になります。
「どんなことを考えるのが好き?」「気づけばよく考えていることは?」「何をしているときが一番楽しい?」「お金をもらわなくてもやっていることは?」「今までお金や時間を一番注ぎ込んできたものは何?」「これだけは耐えられないと思うことは?」など自問自答します。自分の好きと嫌いを明確にして、やり遂げることを決定するのです。
一番楽しいことがわかっている場合は、どうやったらそれが人に役立つか、どんな技能を磨けば報酬が得られるかと、興味を掘り下げていけば天職にもつながるでしょう。大好きなことを磨いて、特別の資質を人と分かち合うことができれば、幸せで豊かな人生を送ることが出来ます。
2.興味と「人に役立っているという実感」を合わせ持つ
自己満足や生活やキャリアのためとするよりも、「他の人にとっても重要」と本人が思える方が、やり抜く人が多いです。例えば仕事だとすれば、その内容は関係ありません。むしろ本人が「社会にとって重要」「役に立っている」と思えるかどうかで、どんな仕事も天職になり得て、やり遂げることが出来るのだとか。ただし、人と助けたいという思いがあっても、興味が欠けていると大きな努力には結びつかないそうです。
3.場所や時間を決めて、習慣化する
先の村上春樹さんの例のように毎日、同じ時間、同じ場所で習慣づけることが継続の力強いサポーターになります。例えば記憶を定着させるには1日30分を毎日継続する方が、何時間もぶっ通しで取り組んで数日で燃え尽きてしまうよりも効果的です。
4. 手本になるメンターを持つ
この人のようになりたいと具体的に考えられる存在を持つことは、モチベーションにもつながります。それが直接会えない人でも、本を読んだり、講演会を聞きに行ったりしてもいいです。一人ではなくジャンルごとに一人ずつ設定してもいいし、その時々の目標で変更してもいいです。失敗したり、挫折しそうになったりしたとき「この人だったら、どう考えるだろう?」「この人だったら、どうするだろう?」と考えて行動してみます。
5にも続きますが、名言の数々を生んだベンジャミン・フランクリン。彼は、愛読誌に掲載されたエッセイを選りすぐり、それをコピーすることで文章力を磨きました。地道なモノマネからスタートし、訓練し続けるうちに、自分だけの表現という金脈を掘り当てたのです。
5. 目標を明確に設定し、弱点に集中的にとりくむ
アメリカの政治家で『フランクリン自伝』というロングベストセラーを執筆したベンジャミン・フランクリン。彼が文章力を培った方法があります。まず、愛読誌「スペクテイター」に掲載されたエッセイを選んで、良いと思ったものを何度も繰り返し読んでメモを取ります。そして、原稿を見ずにそれを書いて、間違ったところを修正し続けたとか。
自分の弱点は、論理的な主張を展開させていくことだと知ると、メモの順番を正しい順序に並べ直す練習にフォーカスしたそうです。さらには散文から韻文へ、韻文から散文へと書き換える練習も行い、言葉を操る能力を磨いたとか。
たとえ指導者がいなくても、このような方法で明確なフィードバックを得て、完全な集中をして改良し続けることで、継続で得られるスキルがさらに効率的に磨かれます。
6. 失敗を能力のせいではなく努力不足と捉える
人は変われる、成長できると信じる「成長思考」の人は、才能は鍛えることでは伸ばせないと考える「固定思考」の人よりもやり抜く力が強いです。
失敗したときに「無力な自分はこれをどうすることも出来ない」「やっぱり才能が無いんだ」と考えるのが「固定思考」の人。「成長思考」の人は、失敗を能力不足ではなく、努力不足として受け止めます。そして「今回のことでなにを学ぶべき?」とポジティブな態度で捉えることで、無力感を乗り越えることが出来ます。
そして改善すべき点が見えてきたら、5の目標を設定し、集中的にとりくむ、を行います。
※『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』には、外側からどうサポートし、やり抜く力を伸ばすかという具体的な法則についても網羅されています。
「絵が下手」とクビになったディズニーも、成功するまであきらめなかった。
あのウォルト・ディズニーも広告代理店から「絵を描く技術がまったくない」と言われて1か月で解雇されたことがあります。
一念発起してラフ・オー・ブラムというアニメーション・スタジオを設立し、アニメを制作。しかし大手の配給会社からすべて断られ、興味を持ったたった一つの小さな配給会社も倒産してしまいました。さらにアニメーター全員に辞められ、彼のスタジオはとうとう破綻に追い込まれました。失敗し、夢の挑戦に行き詰まってもやり続けたからこそ、私たちはミッキーマウスやディズニーランドを知ることになったのです(『こうして夢は現実になる』より)。
カーネル・サンダースも、成功者としてもまた、情熱と粘り強さでも負けていません。65歳でケンタッキーフライドチキンを起業。無一文の彼は起業計画を1009人に話して見向きもされず、1010人目に受け容れられたことで達成できたとか。例えば彼が10人目で、あるいは100人目、500人目、いや1009人目で諦めたら、KFCは存在しなかったのです。
参考:10年かけて映画『トゥルーノース』を完成させた清水ハン栄治さんに聞く、どんな時も希望を指す心の羅針盤の見つけ方
千里の道も一歩から。景色を楽しみながら続けよう。
失敗や挫折、うまく物事が進まない閉塞感は辛いものです。そんななか、努力し続けるのは、まるで雲をつかむようです。
けれども、私たちはさまざまな感情を体験するためにこの物質世界に生まれてきたとも言われています。それは成功することやゴールに達することだけが人生の醍醐味ではないということ。そこに至るまでのドラマ、気づきや学びを欲しているのです。
そして、私たちはそれぞれに魂から喜ぶような好きなこと、死ぬまでに体験したいこと、やり遂げたいと思っていることが誰でも必ずあります。自分が決めたことをやり続けるというのは、苦行というよりも、そんな自分と世界を信じるという愛なのでしょう。