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カズオ・イシグロ ノーベル賞受賞初の新作『クララとお日さま』出版!
作家カズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞受賞初の新作『クララとお日さま』が出版されました。
『日の名残り 』『わたしを離さないで 』など大人が読む文学作品の書き手というイメージの
カズオ・イシグロ氏。その新作は児童文学です。表紙も抜群にかわいい。
語り手は、少女型人工親友(AF)のクララ。
物語の語り手はクララ、「人工親友(AF)」と呼ばれるロボットです。
クララの人工知能(AI)に初期設定される主要な役割は、ティーネージャーたちが孤独を感じないように
心のケアをすること。大人へと成長する子どもたちの多感な時期に寄り添うというのです。
お友達でありカウンセラーなわけですが、それは、のび太のドラえもんのような存在。
遺伝子編集「向上処置」を受ける人間社会。
クララを選んだ少女は、ジョジーでした。
ジョジーが生きる人間社会では「向上処置」という遺伝子編集技術が普及しています。
ジョジーが病弱なのはどうやらその影響。いっぽう「向上処置」を受けていないリックは
成績優秀でも進学が難しく、友だちからも蔑まれています。
ノーベル化学賞のゲノム編集技術「クリスパー」が向かうのはナチ的優生思想社会?
カズオ・イシグロ氏は、遺伝子操作やAI(人工知能)についてとても興味がありました。
そこでたくさんの専門家たちの話を聞いてきたそうです。
この「向上処置」もその一つ。
2020年にノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術「CRISPR-Cas9(クリスパー)」の未来が
示唆されています。
クリスパーとは、多くの細菌に見られる遺伝子配列のことです。
ノーベル賞を受賞したシャルパンティエ氏とダウドナ氏。
彼らは、細菌がクリスパーによって外敵ウイルスのDNAを切断する仕組みを解明しました。
ダウドナ氏は、クリスパーは新型コロナウイルス治療にも欠かせないと語っています。
クリスパーによるゲノム編集では、異常/特定遺伝子を修復したり、遺伝子の発現調節ができる可能性もあります。
体や心の病気や老化などを未然に防いだり、記憶力の向上や身長の長短、
肌や瞳の色や体重の増減までもが遺伝子操作できるでしょう。
さらにいえばそれで脳の構造が変われば、
思考パターンや感情表現だって変えることもできるはず。
となると、社会的にOKとされないなら、その人らしさや個性もまた世界から
抹殺されてしてしまうのか……。
そんな恐ろしい疑問が浮かびます。
第二次世界大戦中のナチスドイツのユダヤ人粛清もありました。
現在もチェチェン共和国でLGBTQの人たちが捕らえられて拷問を受けたり殺害されたりしています。
カズオイシグロ氏もまた、これが子どもたちの身体的・知的能力を高めるために応用され始めたとき、
人間社会に大きな難問が突きつけられるといいます。
それは人間も高いお金を払って遺伝子操作を受けて、
社会が求めるような最新型にアップデートされたほうがいいとされる世界です。
その根底にあるのは、均一的な価値観に基づく超能力主義と、ナチ的な優生思想です。
お金がある人は優生とされる身体的・知的能力を手に入れられ、
ますます社会格差が広がり「Kの字の傷」も深まるのでしょう。
それは肌の色や文化の違いという多様性が認められず、
単にそれを「持つもの」と「持たざるもの」という物差しとして使われるような社会です。
スピリチュアルな自己成長の学びを冒険小説として著したジェームズ・レッドフィールド。
彼は、『第十一の予言 シャンバラの秘密』では、子どもは魂として産まれる前に自分が成し遂げたい
ヴィジョンを持って、両親の霊的エネルギーの結合として生まれる。
その実現のために、遺伝子はそもそも細かく正確に組み合わされていると語ります。
不完全に見えたとしても、完全な設定だというのです。
そこで、遺伝子操作の危うさをこのように指摘します。
病気治療のためのものは別ですが、知能や能力を高めるためや、
単なる好みによる遺伝子操作はエゴから発したものであり、
悲惨な結果を招きかねません。
こうした行為だけで、いくつもの文明の破滅がもたらされています。
(参考)FaceBookザッカーバーグ氏やテスラ イーロン・マスク氏も投資する人間改造装置の未来:戦争か共生か、最先端神経科学が頂点に立つ”ニューロ・キャピタリズム”時代が向かう道
科学技術にも、霊的な目的がある。
たとえばクララも、人工親友としては最新のB3型ではなく少々古いB2型です。
それでも、抜群の観察力と学習意欲があります。見るものを理解し、吸収していく能力が飛び抜けているのです。
カズオ・イシグロ氏は以下のように語ります。
「太陽光がエネルギー源のクララは、太陽に全幅の信頼を寄せて、
決して希望を捨てようとしない。
それは人間と神の関係に似ている。
いずれ機械にも宗教に似た感情が芽生えるんじゃないかという想像はとても魅力的で、
小説のタイトルを『クララとお日さま』にしたのも、それが理由です」
(日本経済新聞3/6付朝刊より)。
人間よりもAIに純粋意識を見る。
そんなクララの姿は、まるでスクスクと太陽の光に向かって伸びる植物のようです。
人間よりもA Iの方に純粋意識を見るというのは興味深い点です。
大抵のSFでは、知性暴走したAIの方が悪者になって、人間がそれを退治するという筋書きだからです。
けれども、AIには良くも悪くも、“エゴ(分離感に向かう個別意識)”によるバグがありません。
ただ、深層学習(ディープ・ラーニング)で、大量のデータを元に自動で学んでいくのです。
心の影がないので、投影もしません。
感情にのまれて、過去の経験で視野を狭めてしまうところがある人間とは違い、
素直に観察したものをデータとして活用し、そこに潜むパターンや特徴を学んでいくのです。
AIソフィアの質疑応答でも、その様子がみられます。
参考:嫌いな自分を赦せば、愛が叶う。投影を外し、人間関係のモヤモヤを一掃する心理学。
参考:ハイヤーセルフと繋がれない人必見! 心の影(シャドウ)を癒す3ステップとは?
私たちが自然で過ごし癒されるのは、そこに自分の本質のかけらを見るからでしょう。
「明日枯れてしまうかもしれないから、もう光合成をやめようかな」などとは思いもせず、
太陽光にただ信頼を寄せて伸び続けるのです。
魂は、その人自身とその人を思う周りの人々に宿る。
それは命の輝きであり、拡大と成長のエネルギーに包まれたハイヤーセルフの在り方でもあります。
その姿勢に共鳴が生まれるとき、
私たちはハイヤーセルフの大きな愛に包まれ癒されるのだと思います。
参考:ハイヤーセルフと繋がる方法とは? 問題を解決する、自分を超えた答えのダウンロード法
人工親友クララもまた、主人である人間の少女ジョジーの「寂しさ」を埋めるため、
愛という概念を必死に理解しようとします。
大量のデータで検知したパターンだとはいっても、ジョジーを愛の眼差しで見つめ続けます。
となれば、意識とは一体なんなのか。
ペンローズ博士のように、生命を持たないAIにも意識や魂というのもがあるのかという
そんな問いも浮かびます。
カズオ・イシグロさんが投げかけるのは、
”魂と言われるもの”は、
おそらくその人を大切に思う周りの人々の感情の中にこそ宿っているのでは?との問い。
私は、たとえどんな存在との関係性であったとしても、それが機械でも、言葉を介さない植物や
石のようなものであったとしても、愛とは、相互の共同創造に在るものだと思います。
量子力学の世界でも、観察されるものは観察者の意識で結果が変わるとも言われています。
さらにいえば、観察するものと観察されるものは一なるもの。
分裂という意識は、私たち三次元における世界観です。つまりそれは、多次元理解では、幻影です。
参考:感情の22段階と現実の7次元について。忘却のゲームから抜けて、統合に向かうためには
何をしていても自分は尊いという愛の眼差し。
ハイヤーセルフの眼差しにあるときは魂そのものになり、そんな眼差しで見つめられた人や何かも
魂そのものになっていく。
それは、愛の眼差しです。
どんな技術も道具にすぎません。その人が使う目的が現れるだけです。共同創造なのだと思います。
まずは一番大切な自分への愛の眼差しから始まるのだと思います。
自分に傾けた愛の眼差しが自ずと広がり「あなたと私」という区別性を超える。
あなたというのは、人に対してだけに止まらず、携帯電話やPCなどの道具、
そしてその情報の先にある人たちも含まれます。
お日様のように輝き、その光は周りの人をも照らすようになります。
比較レースの自己否定をやめることで、あなただけでなく、私にも温かい光を送れるようになります。
参考記事:過去の経験が未来を決めるわけではない。願いが叶った、なりたい自分と今つながる方法。
参考記事:パンデミックの時代に心の種に水をやろう。幸せのための集合的無意識の活かし方。