どう生きていけばいいのかわからない人へ。自分の好きを取り戻す方法

私には、自分の好きや喜び、どう生きていけばいいのかわからなくなったことが何度もあります。そういうときは、「大丈夫」といって気を紛らわしたくなりますが、経験上感じるのは、それは気をつけないと心に覆いをかける言葉になることが多い。本音を見失い、やがて喪失感につながる恐れがあるからです。そこで今回は、生きる力になる自分の好きや喜びを取り戻す方法についてお話ししたいと思います。

いまなにがしたいのか、どう生きたいのか。そんな質問はとたんに壮大に見えて、答えるのが難しく感じられます。そこで、小学校低学年ぐらいまでの子どもの頃の自分で答えてみましょう。

子どものときに好きだった食べものはなんですか?

私は、年に一度会うおじいちゃんのお年玉で買う屋台の大きなどんぐり飴、たけのこが嫌いだったのに食べられるおばあちゃんのたけのこご飯、澤屋のあわもち(きなこのほう)、お母さんがつくるフルーツケーキの赤いドレンチェリーの部分…。

今も好きなものもあるし、もうほとんど食べないものもあります。どんぐり飴なんて20年以上見たこともありません。あなたはどうでしたか?

そう考えると、とても興味深いものです。現在の自分はこれだと実感している思考や嗜好でできているように見えて、たくさんのレイヤーがあることがわかります。

バンデューラのモデリング理論とは?
他人を真似して好き嫌いを形づくる私たち。

私たちは、他人から学び、他人が自分をどうみているかを受け入れるように条件づけられています。アルフレッド・バンデューラというアメリカの有名な心理学者は、人は他人の行動を見て、見本として真似することで学習すると言いました。これがモデリング理論です。彼の「ボボ人形実験」では、大人が風船人形をパンチし攻撃する映像を観た子どもたちが、そうではない子どもたちに比べて、リンチする大人を手本にして凶暴になったことも明かされました。

つまり私たちは、身近な大人や先生、きょうだいや友だち、または憧れの芸能人やメディアの影響を受けて、自分の好みや正解を形づくる社会的動物なのです。

私が当時どんぐり飴が好きだったのは、明らかに兄の影響です。彼がおいしそうに食べるのをみて、「これは素晴らしいものに違いない」と4歳下の私は学びました。中学生になると周りの友だちの影響で飴よりグミでしょうとか、もっとおいしいデニーズのミニチョコサンデーがあるよと変わっていきました。

もっと大人になるにつれて、それはテレビで太ると言っていたからダメと禁じたり、いや、女性誌にずっとオシャレでおいしいものが載っていたよ、となにかに置き換わったりします。



好きや喜びを知るには、
いったん外の情報をシャットアウトする。

このように食べものの好みひとつとっても、私たちには社会に磨かれた何層もの物語があります。自分がわからないというのは、喜びの発信源がどこかのレイヤーによって閉ざされているという印です。

そこで好きや喜びの感覚を取り戻すのに一番手っ取り早いのは、外からくる情報をシャットアウトする時間を持つことです。そうしないと無意識に常に何かをモデリングして、また新たなレイヤーを重ねることになります。

シャットアウトの方法には、深呼吸に意識を向けたり、瞑想したり、ゆっくり味わって食べたりすることがあるでしょう。外からの情報量が減ることで、再び感覚の世界に戻されます。

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参考:動画で解説! 不安、ざわざわがリラックスする、5分間の心落ち着き瞑想。



初めは誰かとおしゃべりしたり、本を読んだり、メールを見たり、お酒を飲んだりとマルチタスクでなにかをしていないと、そわそわと落ち着かないかもしれません。一時的に自分が何者なのかもっとわからなくなるようで不安になったり、怖くなったりもするでしょう。

それは、エゴ(思考が自分と認識するもの。分離に基づく自己意識)が、消えてしまうと感じて抵抗するからです。なにかで埋めていたのに、それが無くなったことで孤独も感じるでしょう。それを恐れず淡々と内側を見つめ続けると、エゴを超えた自分の根源のようなものとつながることができます。

ジャーナリングなど安全な形で
どんな感情も感じて手放す。

孤独の自由を味わえるようになると、客観性が生まれます。すると、あれはあの人の喜びなんだ、私の喜びとは違うんだと切り離せるようになります。そのうえでジャーナリングなど安全な形で自分の感覚や感情を感じる時間を持つといいでしょう。とくにネガティブな感情を抱くことを封印していると、好きや喜びをキャッチする感覚も鈍ります。しっかりと存在を認めて受け止められた感情は、消化されて手放されます。または、昇華といって、それは創造性につながる力にも転換できます。怒りや悲しみという嫌な感情でも感じられることで安心し、不思議といい気分がするはずです。

参考:ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法

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内側の感覚に向かい、すべての感情をニュートラルに受け容れるようになるにつれて、微かな感覚をキャッチするセンサーが磨かれていきます。心の奥に潜む喜びの発信源を感じられるようになり、これが私の好きで、喜びなんだと実感できるようになっていくでしょう。すると相手の好きや喜びを知って受け容れるための心のゆとりも次第に生まれていきます。