願望実現では、好きなことを頑張らずにやるとうまくいくとも言われます。ところで、この「頑張らない」という言葉の解釈がミソです。潜在意識の仕組みやそこに影響を与える私たちの観念や信念体系の存在を踏まえる必要があります。そこで望む未来を現すカギになる感情の先取りと、器の育み方とは一体何か。たゆまぬ努力で2つの五輪金メダルを獲得した大橋悠衣選手の言葉を例に出しお話します。
目次
願望実現は、好きなことを頑張らずにやるとうまくいく?
願望実現や望む未来を叶えるためには、意識の次元を下げないこと。つまり好きなことをやること、さらにはリラックスして行うとうまくいくと言われます。
たしかに「ストレスなく絶対叶う」「努力しなくても成功する」と潜在意識も含めた意識全体が確信できれば、その現実は目の前に現れるでしょう。
辛いことが必要という観念や信念体系のメンタルブロック。
ところが自覚するかしないかに関わらず、「こういうプロセスを経ないと無理でしょ」という観念や、「今のわたしには到底無理だ」「もっとやらないと叶わない」という信念体系があると、そうならない現実が繰り広げられます。
ポジティブもネガティブも等しく働く願望実現の方程式。
なぜなら願望実現における公式は、
Aの状態の現実は、Aの状態の人物に現れる。
Bの状態の現実は、Bの状態の人物に現れる。
したがって、Aの状態の現実は、Bの状態の人物には現れない。
だから。
この公式はときに「イジワル!」と叫びたくなるほど、ポジティブもネガティブも等しく働き、どこまでもシンプルでフェアなんですね。
一生懸命やらなくていいに生じる誤解。
つまり、一生懸命やらなくていいのか、といえば、そこに誤解が生まれてしまいます。
「こういうステップを踏まないとダメでしょ」「嫌なことをしないと無理でしょ」「今の自分のままじゃ力がない」「絶対達成されないはずだ」と思っている限り、「こういうステップを踏んでいないから自分には実現しない」現実が現されるからです。
信じること、感じることが現実になるんですね。
参考:バシャールが語る、望みをブロックする観念とはなにか? 苦しみをさそう観念の外し方について
論語の教え、「知・好・楽」は願望実現の原理。
そこでヒントになるのが、論語の教えである「知・好・楽(ち・こう・らく)」という言葉です。
好きこそものの上手なれということわざがありますよね。この「知・好・楽」は、それをさらに深め、願望実現の原理を表しています。
「知・好・楽」の意味は、
- なにごとにもそれを知っているだけの人は、それが好きな人にはかなわない。
- さらにそれが好きな人は、それを楽しんでいる人にはかなわない。
で、多くの物事を成り立たせる根本的な法則を説明しています。
つまり、努力の方向性を変えて、同じやるでも楽しんでやるということなんですね。
苦しい練習に耐えるアスリートの場合は?
楽しんでやる? じゃあ苦しい練習は意味がないの? と、ここで再び疑問が生じます。
極限状態に自分を追い込んで願望実現するアスリートは、違うじゃないかと。
例えば、五輪史上初の1大会2つの金メダルを獲得した大橋悠衣選手。貧血に悩まされ、負けもつづいて「水泳をやめたい」「自分はダメだ」と思いながら、歯を食いしばって練習し続けました。100%を超える努力をし続けました。
ご自身のことを全然ポジティブじゃないと自負されるし、血のにじむような努力をされて、好きなことをただ楽しんでいるという気楽さが彼女の成功を導いたとは到底思えません。
参考:「ありのままの自分を大事にする」と「向上心を持たずに堕落する」の違いは?
楽しい感情という、望みが叶ったエネルギーをまとう。
では、なぜなりたい未来の自分を超えるような現実を実現されたのか。
レース後の大橋選手の言葉に答えがあります。
「不安もあったが、とにかく自分のレースをしようと思っていた。自分を信じて泳いだ」
と語り、
とお話しされていたのです。
つまり楽しいという感情という、レース中は望みが叶ったエネルギーをまとっていたのですね。
潜在意識対策で、叶った自分である器づくりも必要。
そこに至るには、叶うための器をつくる必要があります。なぜか?
潜在意識の抵抗に負けないぐらい、自分を信じる力が必要とされるからです。逆にいえば、これがあれば、何をどうしようとも、何をどうしなくても、願望は実現されます。
とはいえ、究極的に私たちの意識はそれを望んでいないんですね。物理世界での抵抗の中で意識を拡大させることを求めているからです。
私たちの潜在意識は、変化を嫌います。自我の自分が変化を恐れて抵抗するために投影する世界に耐えられるキャパシティーが必要になるんです。
それは、自分らしく生きるためのお試し、最悪の可能性をみるためのお試し、最高の自分に出会うためのお試し、どんなときでも愛と感謝を表すためのお試しなどです。シャーマニックテストとも言われます。
その関所を抜ける力になるのは、高いエフィカシー(自分の能力に対する自己評価)です。自己評価と自己イメージが変われば、ラクでいられる範囲(コンフォートゾーン)も変わります。つまり潜在意識の抵抗が無くなるんですね。それには叶った自分と同じ心と体づくりが必要になるんです。
ではその器づくりとはいきなりすごいことをしなければいけないのでしょうか?
いいえ、違います。外側の現実に左右されず、自分とした約束を淡々と果たせばいいんです。自分のことを24時間365日見ているのは、他でもない自分だけだからです。
どんなに「ムリ」と潜在意識が叫んでも、心と体の状態がそこにあり続ければ、抵抗は薄れていくのです。
NiziUやTWICEの生みの親であるJ.Y.Parkさん。彼は、いつも最高のパフォーマンスをするためには、むしろ日々の積み重ねを着実にするべきと言います。その結果、楽しんでパフォーマンスすることができ、その輝きが人の心を打つのだそうです。
参考:寝ても覚めてもNiziU熱。スピリチュアルな経営者、J.Y.Parkさんの3つの魅力。
それ以外の例としても、宇宙飛行士として宇宙空間に飛び立つ前には、数々のトレーニングを行う必要があると言います。正しい訓練がなければ、ロケット打ち上げのときの強烈な重力状態に耐えられず失神してしまうそうです。さらには無重力状態での乗り物酔いのような吐き気対策、なにか不測の事態が起こったときのメンタル筋力も鍛える必要があります。
宇宙に出られる心と体づくりが必要なんですね。
つまりその状態の人で在るために、そこに耐えられる器をつくる必要があるんです。
参考:望む未来を引き寄せ、奇跡を起こす人の意識状態について具体的に説明します。
試練は、さらに良い未来、人生が飛躍する兆し。
つまり、人生の試練が現れるというのは、さらに飛躍する兆しともいえます。
立ち止まらざるを得ない状況にあるのは、そこで自分の本音を見つめて、自分がどこにいるべきかをはっきりさせるため。誰といて、どう時間を過ごせば本当に幸せなのか。そして可能性を許容し、視野を広げて対策を打つ時間だということです。
参考:自然なあなたが一番美しい。ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法
すべて願望を受け取る器づくりの一環なんですね。
願望実現で”頑張らない”とは、力みを抜くこと。
では、改めて願望実現において、頑張らないというのはどういうことでしょうか。
わたしが禅センターやエサレン研究所、プラムヴィレッジなどで老師やスピリチュアルマスターに坐禅や瞑想を教わったときのことです。彼らからは一様に、その効果は現実世界でどう行動するかに現れると言われました。瞑想中にすごい映像をみたり、ワンネスを経験することがゴールじゃないんですね。言い換えればそれは、実際の人生でどんな感情が強いことが起きても、自分の平衡感覚を保てるかに現れるということ。
現実創造においても、すべての原因は内面にあるとされます。
感情にトラップされたサバイバルモードから、例えば「お金があったらこういうことをやるよね」「実力があればこうするな」ということを今から肩の力を抜いて淡々とやるということです。物理的には頑張っているように見えますが、感情的には”頑張らない”エネルギーをまとっている状態です。
参考:自由と多様性の風の時代を生きる、ハイヤーセルフとつながるために必要な6つのこと。
ハイヤーセルフ(超自我)の意識につながる。
それはなぜか。同じことをするにも、やらされているのではなく、自分でそれを選択しているという実感を持っているからです。
ヒンドゥー教の聖典『バカヴァッド・ギーター』をもとにしたディズニー映画『ライオン・キング』の主人公シンバ。彼は、父の死が自分のせいだと罪悪感を持って、へんぴな土地で「ハクナマタタ(気にするな)」と気楽な数年を暮らします。
ところがどんな問題にも関わらず安楽なはずなのに、モヤモヤしてしまう。つまり自己肯定しているように見えて、それは本当の自分の望みを許容していないことなんですね。
最終的には自分の役割を理解し、それによってたくさん大変なことがあるけれども、王国の調和と繁栄を回復させて命を輝かせます。
つまり自分で選択して行っているという実感が、行動としては頑張っているように見えて、結果として内側からは頑張っていないエネルギーをまとっているということ。
今の自分に満足しているんです。つまり望む未来の自分とつながっているということ。
”やらされてやる”(被害者意識、必死)から”選んでやっている!”(自分中心、夢中)と、行うスタンスが違うと、表面的には同じ努力や苦労、頑張りに見えても、それは”犠牲的にガムシャラに頑張る”ではなく、”自分を受け容れて大切にする”になっています。
これは高次で自由の多い意識状態ともいえます。つまり、意識の自発性を100%尊重し、より高次の方向性へと導くハイヤーセルフ(超自我)の意識につながります。禅でいう無心です。それは常に物事を客観的に観察し、バランスと成長へと導く超自我とも言える意識状態です。
参考:ハイヤーセルフと繋がる方法とは? 問題を解決する、自分を超えた答えのダウンロード法
そんな未知の領域や十分に知らない自分とつながることで、過去の経験と智慧のすべてを使っても解決できないことのヒントや資源と繋がることができるんです。その結果、潜在意識の制限を外し、願望実現のプロセスを踏むことになります。