良いビジネスやパートナーシップの鍵になる、相手が本当に欲しいものを知るために役立つこと

良いビジネスや深いパートナーシップについて考えるとき、相手が本当に求めるもの、つまりその人にとっての価値や真のサービスを知ることが大切です。それは「ありがとう」という感謝や愛のエネルギーを現すもので、相手への深い共感と想像力が必要になります。けれども、相手と自分は同じ人間ではないので、それを知るのは至難の技。そこで鍵になるのが、自分が望むものと望まないものを体験することです。相手へのサービスなのに、どうして自分が体験する必要があるの? お話ししたいと思います。

人に頼むのはハードルが高いなら、
ホテルを望みやサービスを体験する練習場に。

誕生日にホテルステイを贈っていると、バースデーケーキが食べたくなりました。でも、ホールケーキはひとりでは食べきれない。さらに自分の望みを掘り下げると、ホテルのケーキよりも地元の人に愛されるお菓子を味わってみたい。ということでネットで調べた店で小さなカットケーキをふたつ買って、持ち帰りました。すると予想外にも、部屋にお皿やシルバーが無い。ガーン…。

フロントに電話してお願いすればいいのですが、仕事を増やしてしまうようで申し訳ない(自分でベッドメイキングしてしまう、根っからの貧乏性)。出来ないことはないから、そのままワイルドに食べてしまおうかと思いましたが、それもなんだかなぁ….(苦笑)。

よくよく考えると、ホテルとは付加価値を提供するビジネスです。ここにはおもてなしのプロ集団がそろっています。また、サービスの受け手として望みを現すことは、ホテルにとっても顧客データになるでしょう。つまりホテルは、安全な形で自分の望みに許可を出して試せる練習場なのです。ということでお願いしてみたんです。小さなケーキ皿とシルバーをひとつずつお借りできませんかと。

すると白いナプキンをお盆に敷いて、年季がはいったノリタケのケーキ皿とシルバーをお部屋まで持ってきて下さいました。これは、私が学生時代、バイト代が入って初めて亡くなった祖母に買ったカップアンドソーサーと同じブランドのもの。おばあちゃんもお祝いしてくれているのかな。そして、ケーキにはてんとう虫。心がぽっと温かくなりました。



ビジネスもパートナーシップでも、
サービスは「ありがとう」を生む贈り物。

このようにサービスって贈り物だと思うんです。それはビジネスもパートナーシップも同じで、「ありがとう」という気持ちが、ビジネスの場合はお金という報酬や対価として、パートナーシップの場合は愛や深い信頼関係として現されるのだと思います。深い満足感を生むには、お願いされたことはこれだけど、そこにちょっとこんなことを利かせて贈ったら、受け取った人がもっと嬉しいかな。笑顔になるかな。という想像力が必要になります。

例えば廊下で宿泊客とすれ違ったときに、「ありがとうございます」と深くおじぎする。相手が見ていなくても、足音を感じながら遠く去るまで、おじぎの姿勢をキープして立ち止まる。15秒ぐらいの話です。その間は、2つ深呼吸して瞑想にし、自分のエネルギーを補充しておけばいいんです。そんな自利と利他を兼ねた心づかいが、AIではない、血の通ったサービスになるのだと思います。

参考(例えば、この呼吸法で深呼吸):動画で解説! 不安、ざわざわがリラックスする、5分間の心落ち着き瞑想。

相手のことはわからないから、
まず自分の望みと望まないことを知る。

とはいえ、相手と自分は同じ人間ではないから、それで相手が喜ぶのか、感謝するのか、本当に相手が求めるものなのかは、わかりません。でも、自分だったら、ホテルの部屋でひとりケーキを食べたいなら、どんなセッティングだったら嬉しいかな。それを想像して贈ってみることはできるでしょう。

そこで、まず自分の望みを知って、体験することが大切なのです。共感力が増して、想像の精度が高まるからです。




英語では、その人の立場(身)になって考えることを、put yourself in one’s shoes (直訳すると、自分自身をその人の靴に突っ込むの意味)といいます。

自分の身を、相手の靴のようなその人の体重がかかって一番窮屈そうなところに突っ込んでみる。そんな風に、その人の目と耳と心で感じるように世界を捉え直すことが、真の共感につながります。受け取った人の心がポッと温まるようなサービスは、そんな深い共感を伴った想像力から生まれるのだと思います。

同時に、自分が望まないこと、嫌なことを体験することもとても役立ちます。

例えば、病気や大切なひとを失ったりという、つらかったり苦しかったりする経験は、共感力の深度と幅を広げてくれます。例えば、それらしい言葉を並べたてるよりも、ただ話を聞いて欲しい。もしくは何も言葉を交わさず、特別何かをするよりも、ただ一緒に居て欲しい。前を進むように後押しされたり応援されたり、「あなたはこうだね」と決められるよりも、今は、私のペースやプロセスをただ信じて欲しい。そういう時期があることも、わかるからです。

悲しみも喜びも深い実感を伴う体験は、
相手への共感力と想像力を育んでくれる。

つまり、望む体験も望まない体験も、自分を知り、相手への深い共感を育むための大切な時間です。つらい経験はなるべく避けたいものですが、このように、深い学びや気づきを得るチャンスにもなります。実際に、私が知る、私の望むことを受け取りやすい形で贈ってくれる人は皆、つらい経験を重ねながらそれを乗り越えて、相手への優しさや思いやりに変えてきた人たちです。

参考 :一緒にいると、本当に癒される人の特徴。良いヒーラー、カウンセラーの役割、選び方とは?

自分の望みがわからないという人もいるでしょう。私の経験上、そういうときは、”私はこうあるべき”と、怒りや悲しみというネガティブな感情を閉ざしてしまっていることが多いです。そうなると愛や喜びを感じるセンサーも鈍ってしまうんです。そこで、ジャーナリングなどの安全な形でそれを現し、感じて、昇華させる時間を持つのもおすすめです。

参考:自然なあなたが一番美しい。ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法

自分が相手に贈りたいことよりも、自分が相手の立場だったら、どうして欲しいのか。彼らの靴に自分を丸ごと突っ込んだとしたら、なにが嬉しいのか。胸がポッと温まるのか。助かるのか。そんな深い共感と想像力がビジネスの場でも、パートナーシップや家族、友情における関係性でも、深いサービス(奉仕)や愛を贈ることになり、受け取り手の満足感を生むのだと思います。