望みを叶えるというと、なにかすごく大きな夢とか人生が大逆転するようなドラマティックな出来事じゃないといけないという話ではないんです。もちろん大望を持つこと自体は、素敵だし大切です。宇宙の仕組みを考えれば、願望を出さないとオーダーが入りませんから。けれども大きすぎる願望に圧倒されて、今の自分にダメ出ししてツラくなってしまうと、人生が途端に暗くなってしまいます。夢を持つこともしんどくなって、モチベーションも続きません。さらには、望みが叶った状態の自分とエネルギー(波動)が違いすぎて、夢や願望を受け取ることが出来ません。
そこでお伝えしたいのは、村上春樹さんがつくった言葉の「小確幸(しょうかっこう)」。詳しくは「村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた 」という本に載っていますが、意味は、小さくても確かな幸せのことです。村上さんにとっての小確幸とは、頑張って運動した後に飲むきりきりに冷えたビール、やっとみつけた中古レコード、隣の猫の消息などです。
私が顔面マヒで緊急入院したときの小確幸は、アマゾンPrimeで観る、韓国ドラマ『キム秘書はいったい、なぜ?』でした。主人公のパク・ミニョンがキレイで、うっとり眺めていました。
参考:ドン底気分を底上げしてくれる韓流ドラマはコレ!顔面マヒ(ラムゼイハント症候群)で緊急入院する。
私にとってカフェやコーヒーショップで過ごす時間もまた、小確幸です。アメリカの禅センター生活中も、休みの日は、片道1時間かけて自転車で山を降りて、コーヒー片手に日記を書くというのが至福の時間でした。
先の見えない日々に心細くありつつも、丁寧に淹れてもらったコーヒーはやっぱりおいしくて、じんわり幸せな気持ちになったんです。
今暮らしている家は駅からちょっと距離があって、気楽にカフェやコーヒーショップに行くことができません。そこで現在の小確幸は、焼き菓子をつくって両親と食べること。栗原はるみさんのレシピは失敗なしでおいしく、片っ端から焼かせてもらっています。特にバナナケーキは毎朝のスタメン。今日はチーズスコーンに黒コショウを入れて焼いてみたら美味でした!
おいしいものを食べるというのは、心強い小確幸ですよね。
信じているもの、感じているものが現実になるというのが引き寄せの法則です。
諸説ありますが、そこで願望を引き寄せるために行うことは、大きく2つ。
- 体験する
- いい気分でいる です。
1は、私たちが暮らす物質世界では、頭で思っている、考えているだけでは、引き寄せるための磁石にはなれないということ。そこで、心と体の両方を使って体験する必要があります。
2は、叶った状態の気分(エネルギー)と同調していないと、波長が違いすぎて受け取れないということ。そこでエネルギーを上げて、いい気分でいる必要があります。
つまり、いい気分になることをしていると、幸せになるということです。
えー、そんな簡単なことでいいのー?! と思いますよね。
いいんです。
離婚したり、会社を辞めてアメリカに行って強盗に携帯と有り金を盗られてフードスタンプの列に並んだり、禅センターやスピリチュアルセンターで修行し続けたり、節約し過ぎて顔面マヒになったりと、その真反対のことをしまくってきた私が、一周まわって断言したいことは、それです。
参考:マガジンハウス社員からホームレス編集者へ。居候生活と禅修行で始まったひとりベーシックインカム制度。4年間のわたしの“家賃ゼロ”という生存計画について
私が人生で一番村上春樹さんの小説を読んだのは、就職活動をしているときでした。面接のたびに、バイト代を貯めて新幹線で上京。お金も時間もかかりました。
「キミ、関西からだけど、うちに受かったらカレシとか大丈夫なわけ?」との面接官の質問にゲンナリしたり、特技を聞かれたのでケモノの鳴き声を披露した後で、隣のシュッとした学生が「中国語です」と答え、「それ、コンパネタ?」とあしらわれたりと、とにかくしんどい日々でした。
そんなときに、どんな無茶振りをされても、シャツには丁寧にアイロンをかけて、アイスクリームにはコアントローをかけて食すような、村上春樹さんの小説の主人公のスタンスに感銘を受けていたのです。
外側がどんなにめちゃくちゃでも、思い通りにならない現実でも、「小確幸をつらぬくぞ」というそのスタンスに「いいなぁ〜」と憧れたんです。
目の前の現実と一定の距離を置いて接しているけど、どんなふうになっていても「自分の世界の真ん中で生きていける」とブレず、絶対的な自分への信頼があるなぁと。ちゃんと今を感じることに集中できていて、心地よさとか美味しさをちゃんと自分に満たしているんです。
参考:ハイヤーセルフと繋がる方法とは? 問題を解決する、自分を超えた答えのダウンロード法
やがて、面接が二次に進むと交通費がもらえるようになったので、「せっかく東京に来たんだし」と、代官山のヘアサロンに行ったり、関西にはない洋服屋さんで試着したりと、満喫するようになりました。メディア研究とか、面接対策とは関係ないことをしていたんです。自覚してやっていたわけではありませんが、今を感じることに集中して、楽しくてワクワクしていました。
その後マガジンハウスに採用されて、翌年書店研修の後で代官山のヘアサロンで髪を切ってもらっていたときに、「あぁ〜、あのときと同じことをしているなぁ」と気づいたんですね。
今考えれば、フライングで行動し、叶った状態の気分を味わうことで、後から現実がついてくるという引き寄せの法則だったんだなと。
有名なアスリートは、こんなふうに良いプレイを常にイメージしているといいますよね。だから、どんなに高い夢でも、それを叶えている状態を引き寄せられるのだと。
でも自己肯定感が低いときは、セルフイメージがそこについていきません。アスリートは、日々練習を積むことでセルフイメージを高めています。
一方で夢に向かって進めていないときは、叶った状態をイメージできない自分に対して、焦ったり、否定的な気持ちになってしまったりします。
そんなときは、まったく夢や願望と関係なさそうに見えても、小確幸で自分を満たすことに専念しましょう。
マーク・トウェインは、人生を振り返ってこう書きました。
かくも短い人生に、いさかい、謝罪し、傷心し、責任を追及している時間などない。愛し合う為の時間しかない。それがたとえ一瞬にすぎなくとも。
まずは、あなた自身と愛し合いましょう。自分を小確幸で満たすということです。
健康でいられる人生の時間は短いのです。無理をして、嫌なことをし続けなくてもいいのです。
目の前の現実が苦痛ではなくなったとき、気分がラクになって、何かやりたくなります。それを行動に移しましょう。それは不足感や恐れからの行動ではないので、夢や願望が叶いやすいクリーンな状態になっています。
そして然るべきときが来れば、幸せはおのずと手に入ります。