朝に3ページほど意識の流れを書き、創造性とつながるという「モーニング・ページ」。映画監督で劇作家のジュリア・キャメロンが提唱しています。その方法を詳しく書いた『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』は、ロングセラー本です。本文にあるモーニング・ページの具体的な方法とその効果、また心理療法でも用いられるジャーナリング(書く瞑想)との違いについてお話しします。
目次
モーニング・ページとジャーナリングの違い。方法やオススメする人は?
モーニング・ページとは?
モーニング・ページを考案したのは、10年以上にわたって創造性を育てるためのメソッド「アーティスト・ウェイ」を指導するジュリア・キャメロンです。彼女はハリウッド映画やミュージカル、テレビ番組の脚本、ドキュメンタリー映画の監督として活躍しました。
キャメロンさんによれば創造性の回復とは、自由な発想を取り戻すことです。
そしてモーニング・ページとは、日本語にすると「朝の頁」。
つまり朝に3ページほど手書きする文章のことです。そして内容は、意識の流れをありのままつづるというもの。
目的と効果。
モーニング・ページをおこなう目的は、創造性を回復させること。具体的には、その第一ステップの自己感覚を取り戻すことです。
世間が、とか、社会が、とか、あの人が、と周りを優先し続けていると、自分が本当にどう感じているのか、本当にやりたいこと、本当はやりたくないことが見えづらくなります。
対して自己感覚というのは、自分が自分として存在しているという感覚です。それが創造性を発揮するためには、欠かせないのだとか。
彼女の『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(英語のタイトルは、メソッドのとおり『The Artist Way』)によると、私たちは怒りや泣き言という気持ち、やるべきことや人の目線などを思いわずらう心があります。それらが自覚できない心である潜在意識の中で渦巻いていて、それが創造性を邪魔するのだと言います。
そこで、以下の効果があるというモーニング・ページを行います。
・脳の中を掃除できる(脳の排水を通す)
・思考の判断を差し控えさせて、ただ書くことに自分を向かわせる
・おのずと、自覚できない「向こう側」につながる
その結果、自分が何を考え、何を必要としているかを知ることができるのだとか。
真剣にやっていくうちに、自分の内部の知恵とつながるようになるというのです。
アーティスト・デートとセットでおこなう。
彼女のメソッド「アーティスト・ウェイ」では、モーニング・ページが第一段階。そして第二段階のアーティスト・デートをセットでおこないます。
アーティスト・デートとは?
アーティスト・デートとは、引き寄せの法則でいうところの、いい気分でいることをする、ということです。
具体的には、週に2時間ほど一人デートの時間を持ちます。その目的は、自分の内なる創造的な子どもの心を満たすため。
「お金がない」「時間がない」「バカバカしい」という思考に邪魔されません。
たとえば、ひとりで映画を観に行ったり、海辺で夕焼けを見たり、水族館や美術館に足を運んだり。「いい作品だと言われているから」ということよりも、自分の感性が響く体験をする時間にします。
人によって、大好きなお店に行く、ゲームをするなどかもしれません。お気に入りのアロマを垂らしたお風呂にゆっくり浸かることかもしれません。自分の中の子ども心が喜ぶようなことを行います。
アーティスト・デートすることで、洞察やインスピレーション、導きなどが受信できるようになるとか。つまり第二ステップのアーティスト・デートでは、モーニング・ページで掘り起こした自己感覚に基づき、いい気分でいることで「具体的にどんなことをしたらいいのだろう?」という解決策をダウンロードします。
これはポジティブ心理学でも言われることで、嫌な気分だと視野が狭くなる一方で良い気分では視野が拡大するからでしょう。
参考:引き寄せや願望実現の法則でワクワクできない、やる気が出ないときに大事なこと
モーニング・ページのやり方。
具体的なモーニング・ページの方法は以下です。
・朝に意識の流れをありのままにつづる(何を書いてもいい)。
・3ページほどの文章を手書きする。
・他人の目には触れさせない。8週間ほどは読み返さないほうがいい。
ジャーナリングとは?
モーニング・ページにとてもよく似ている「書く」ヒーリング法に、ジャーナリングがあります。ジャーナリングもまた、心に浮かんだことをノートに書いて、書いて、書きます。
英語で日記のことをジャーナルというように、ジャーナリングもモーニング・ページと同じように人に見せるものではありません。
参考:自然なあなたが一番美しい。ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法
アメリカでは心理療法でも用いられ、中でもジャームズ・ペンベーカー博士のエクスプレッシブ・ジャーナリング(表現するジャーナリング)は医療分野においても最も広く利用され、研究もされています。
参考:怒り、不安は15分書けば癒せる。効果的なジャーナリングのポイントは7つ
目的と効果。
ジャーナリングは、体験と向き合うためにおこないます。そこでトラウマの治療などにも役立つとか。
私たちは悲しかったり、辛い出来事があると、それが強烈であればあるほど触れないよう意識の奥に押しやります。無意識下に落ちるとそれが地雷のようになって、まったく別のことで怒りや不満が爆発してしまったり、心が止まってしまったりします。
ジャーナリングには鬱屈した思いを発散させ、体験したことの意味を再認識する効果があるとされ、研究でもパートナーとの別れ(1)、愛する人の死(2)、無職状態(3)、自然災害(4)、一般的なストレスを感じる出来事(5)といった、辛い経験から回復する助けになるそうです。
またペンベーカー博士の研究によると各20分、連続する計4日間、辛い出来事や感情について書くと、長期的には免疫機能が向上するなど体もヘルシーになるのだとか(6)。
モーニング・ページとジャーナリングの違い。
モーニング・ページは創造性の回復、ジャーナリングは主に体験と向き合って心を開放させるところにあります。
どちらもおこなってみて、誤解を恐れずいえば、最終的なゴールは同じところに行き着くと感じています。それはハイヤーセルフ(高次の自分)とつながるということ。
参考:ハイヤーセルフと繋がる方法とは? 問題を解決する、自分を超えた答えのダウンロード法
その理由は、認めてもらいたいというホンネを書きながら傾聴して満たすことで、心が整理され、本来のエネルギーが回復するからです。
モーニング・ページをオススメする人は?
キャメロンさんがはじめてモーニング・ページを書いたのは、ニューメキシコのタオスでだと言います。私はナバホ族の集落を訪ねた後に、何もできない自分のことが最高に嫌になったことがあるんです。その後、ふとタオスプエブロを訪ねました。そこで、これまでジャーナリングを好きな時間に行っていたけど、せっかくタオスにいるのだからと、オマージュ的に朝にモーニング・ページをやってみたんです。
参考:ありのままの自分で本当に幸せになれるの? マガジンハウスからホームレス編集者へ。アメリカ先住民ナバホ族の集落で死にかけて学べた私の幸福学。
するとわかったのは、確かに朝は頭が働きやすいということ。一度寝ると脳が休まるせいなのかもしれません。お風呂に入っているときや、寝る前に映画を観ているときにふっと良い言葉が浮かんだりしますよね。そこで、創作活動を目的にした「書く」の場合は、午前中におこなうのも手だと思います。
ジャーナリングをオススメする人は?
ただし、より強い感情体験と向き合いたいときは、ジャーナリングがオススメです。とくに時間を朝としばらない方がいいと感じます。たとえば朝の起き抜けのスッキリしたタイミングがいい人もいるし、夜に1日の出来事を振り返りたいという方もいらっしゃるでしょう。あるいは、怒りなどの強い思いが現れたときにすぐ対処したいというときもあるはずです。
とくに怒りや悲しみ、不安などの強い感情に向き合いたいときのジャーナリングは、自分の心がしっくりくる時間を選ぶことをオススメします。
私の場合は、それはお気に入りのコーヒーショップで安全でいい気分になっているとき。制限時間を設けて朝にジャーナリングすると、焦りで中途半端になって、その気持ちを引きずってしまうときもあるんですね。そこで私は、休みの日の午後早めのランチとお茶の間ぐらいの時間か、夜のまだ眠くない時間。ゆったりとした気持ちになれる時間を選ぶ方が、特定の時間を決めてやるよりも、安心してホンネと向き合いやすいのです。
傾聴ジャーナリングとは?
私がお伝えする「傾聴ジャーナリング」では、感情(ホンネ)と向き合って創造性とつながることも目的としています。そして、タイミングの縛りは設けていません。自分の経験から一番大切なのは続けることで、書くその人自身が安全でしっくりくる時間を選びとることでそれが叶うと思っています。
傾聴ジャーナリングの詳細:2022年、ホンネに耳をすませて最高の答えとつながりたいあなたへ。
まとめ
思いを書くことには、怒りや悲しみなどの感情体験と向き合って手放したり、創造性を回復させる力があります。
今回は、モーニング・ページとジャーナリングの具体的な方法と目的、効果や、それぞれの違いについてお話しいたしました。
想像以上にパワフルな体験になりますので、あなたの心が向けば、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。
またグリーンズさんで「傾聴ジャーナリング」の講座をおこないます。ご興味がある方は、よろしければチェックしてみてくださいね。
参考文献:
- Lepore SJ, Greenberg MA. Mending broken hearts: effects of expressive writing on mood, cognitive processing, social adjustment and health following a relationship breakup. Psychol Health. 2002;17(5):547-560.
2. Kovac SH, Range LM. Writing projects: lessening undergraduates’ unique suicidal bereavement. Suicide Life Threat Behav. 2000;30(1):50-60.
3. Spera SP, Buhrfeind ED, Pennebaker JW. Expressive writing and coping with job loss. Acad Manage J. 1994;37(3):722-733.
4. Smyth J, Hockemeyer J, Anderson C, et al. Structured writing about a natural disaster buffers the effect of intrusive thoughts on negative affect and physical symptoms. Aust J of Disast Trauma. 2002;1:2002-2001.
5. Schoutrop MJ, Lange A, Hanewald G, Davidovich U, Salomon H, tte e. Structured writing and processing major stressful events: A controlled trial. Psychother Psychosom. 2002;71(3):151-157.
6. Pennebaker JW. Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychol Sci. 1997;8(3):162-166.