マインドフルネスとは、今を味わって生きること。そこで充実感や幸福感を取り戻す練習です。大好きなアメリカドラマ『THIS IS US』のファイナルシーズンの最終話を見終わりました。過去・現在・未来が行き交うドラマを締めくくるメッセージは、今という瞬間の尊さを見失わない大切さ。過去を取り戻そうとしたり、先が気になって生き急いだりせずに。お話ししたいと思います。
THIS IS USとは?
『THIS IS US/ディス・イズ・アス』(原題:This Is Us)は、アメリカのテレビドラマです。2016年9月20日から2022年5月24日まで、アメリカの三代ネットワークのひとつ、NBCで放送されました。
日本ではそのFINALシーズンであるシーズン6が、2022年10月Amazonで放送開始。
主な登場人物は、ケイト、ケヴィン、ランダルという三つ子と、その両親のジャックとレベッカ。さらに彼らの周りの人たちが関わりながら、過去、現在、未来が行き来するという構成になっています。
過去では、三つ子が生まれる前、父ジャックや母レベッカの出会いや、彼らの幼少期のエピソードも。現在は、三つ子が36歳の誕生日を迎えるところからシーズン1がスタートします。シーズン6では、彼らは41歳に。そして未来は2040年代、彼らは60歳近くになり、母であるレベッカの最期を見送って、物語が終わります。
物語は全体を通して続きます。けれども1話完結型で観ることもできます。そしてどのストーリーを観ても、ほろ苦く、でもじんわりと温かい気持ちに。
ドラマの原案・脚本・製作総指揮を務めたのは、ダン・フォーゲルマン氏。彼は現在46歳。そこで三つ子たちや、彼らを試行錯誤しながら育てた過去のジャックやレベッカと同年代です。
物語の登場人物である彼らと同じ目線で、自分自身の人生の楽しさやつらさ、面白みや苦さを味わい、ドラマとともに歩む。実際に「THIS IS US」の脚本家の1人、ジャズ・ウォーターズが39歳の若さで亡くなるという悲しい出来事もありました。そんな彼の生き様が伝わるような、その場しのぎの作りものではないドラマだと思います。
そんな彼はこのドラマを惜しまれながらもシーズン6で終了することをあらかじめ決めていました。惰性でやっても仕方がないと。そして最終話は、すでに4年ほど前に撮影し終えていたそうです。
彼はこのような想いを込めて、ドラマを届けていました。
かすかな希望があって、どこか楽観的で、泣けるし、胸にも響いてくる。
その上、気分が良くなる。
僕は視聴者がテレビを見終わったときに、
1時間前よりも嫌な気分になるような作品に携わるために、
この世界に入ったわけではありません。
それは映画でも同じことです。
決して生ぬるくならずに、視聴者を楽しませて
掘り下げることを目標にしています。
そして少しでも気分を高めることができたら嬉しいですね。
出会いのきっかけ
私がこのドラマと出会ったのは、2年ほど前。病気で三半規管がおかしくなったためでした。ラムゼイハント症候群という重度の顔面麻痺になったのですが、同時に平衡感覚もとれなくなりました。そこで文字を読んだり、乗り物に乗ったりするとめまいで吐き気がしてしまう。大好きな読書もできなくなりました。
参考:マガジンハウス社員からホームレス編集者へ。 アメリカの禅センターで体験したお金を交わさない豊かな暮らし。 交通事故、顔面マヒで入院し気づいた私のお金のブロックを解除する
とはいえなにもしないと、見なきゃいいのに、左半分がまったく動かず恐ろしい自分を眺めてはどんどん気分が暗い方向に。そこで気分転換に、しばらくAmazon Primeで韓国ドラマを観まくっていたんです。
そんなときに、オススメの作品として何度も上がってきたのが、この『THIS IS US』でした。変なタイトルだなぁと思いながら、驚くほど高レビュー。
私は3回やってきたメッセージにはとりあえずのってみることにしています。そこで、試しに観てみることにしました。
最初の3話ぐらいは「ふぅん」という感じでした。ところが4話ぐらいですっかりハマりました。「人生っていいなぁ」「葛藤って美しいものだなぁ」と、毎話見ては号泣。
自分が置かれる状況が悲喜交々なのと同じように、他の人もそうなんだよな。当たり前のことではあるけど。
誰だって真っ平らの人生なんてなくて、それが深みや味わいを与える。
そしてダイヤモンドが磨かれるように、唯一無二の、その人らしい人生を形作っていくんだ。
そう教えてくれたのです。
しかも、それは頭を使っての心理学や宗教学の教本を学ぶという姿勢や、哲学書みたいな抽象論でわかったような気持ちなるのではない。ドラマという形で、心が鷲づかみにされて世界に没頭するうちに、「そうなんだね」と腑に落とすことができるという教え方です。
つくづく、そんなふうに人の心を良い方向に動かすことができる彼の力が、とても羨ましいと思います。そして私は、このドラマの存在に、本当に救われました。
最終話のジャックの言葉
最終話では、とくに父である以下のジャックの言葉が響きました。
まだ幼き三つ子の男の子、ランダルとケヴィンに産毛状態の髭の剃り方を教えながら、彼がこういいます。このシーンは、4年前にすでに撮影し終えていたものです。
人は子どものうちは大人になろうとする
そして歳を取ったら過去に戻りたくなる
今を楽しめ
人はそうやって小さな瞬間を集めて生きる
そのときはその尊さに気づかない
先のことが気になってね
でも歳を取った後は、過去を振り返り思い出そうとする
そこへ戻ろうとする
おかしなものだ
ー『THIS IS US』シーズン6 第16話より
今が持つ奇跡を堪能するマインドフルネス
私の父はいま抗がん剤治療中で、入退院を繰り返しています。
今日は退院予定日でしたが、輸血をする必要が出てやはり延期になりました。残念です。
顔面麻痺になったときも思ったけど、昨日当たり前のようにできていたことが、明日には突然できなくなるということがたくさんあります。
そして昨日当たり前のように話していた人が、今日には会えなくなることもあります。
だから今というのは、それがたとえどんな今であるとしても、すべて奇跡の重なりでできています。無数の今ではない可能性があったわけですから。
だから、今ここにないものを追い求めるのは簡単だけど、今ここにあるものは簡単ではない、途方もない奇跡で生まれています。それは今のこの瞬間の私たちにだけ与えられたもの。そして、それはおそらく、私たちそれぞれにとって最適なものなんです。
だから、体験しきらずに見逃すことは、とてももったいないことです。
参考:幸せのカギ、マインドフルネスや「いまを生きる」とはどうすればいい?
もちろん、今ここにないものを追い求めることで、技術革新などのイノベーションが生まれます。それも大切なことです。
でも、今ここにあるものを味わうこと。ありがたいなぁと深く実感すること。その豊かさ、今ここにあるものを受け取ること。
そこから人生のイノベーションが始まるのだと思います。