理論物理学者のデヴィッド・ボーム。量子力学や心理学などから、私たちの思考が現実をどう形づくるのか、その奥にある真理を探究しました。現実創造や引き寄せ・宇宙の法則では、「決めること」(=願望を放つこと)が現実を大きく動かすといいます。『ボームの思考論』では、そのメカニズムをより科学的に、深い洞察で見つめます。
目次
引き寄せでは、「決めること」が現実を大きく動かす。「ボームの思考論」から解説!
200種類の欲望を擬人化したドラマ『ユミの細胞たち』。
『ユミの細胞たち』という韓国ドラマにハマっていました(ハマりすぎて続きが知りたくなり、ウェブトゥーン原作を読んでは課金される日々…)。
ストーリーは、頭のなかの感情を擬人化したアニメ映画『インサイド・ヘッド』にちょっと似ています。ちなみに『インサイド・ヘッド』は、私の心理学の恩師が監修しています。
『ユミの細胞たち』の主人公は、食品会社の会計部(のちにマーケティング部に異動)で働く30代の女性。脳内に生息する200種類の細胞が彼女の行動をコントロールしています。
原作はウェブトゥーンというネット上の漫画です。作者は、イ・ドンゴンさんという男性。
彼によると『インサイド・ヘッド』では感情が擬人化されていますが、『ユミの細胞たち』では、欲望(欲求)が擬人化されているとか。
私たちは、「こうである」と物事を解釈(思考)し、「嬉しい・悲しい・楽しい・寂しい」などの感情を抱きます。そこで苦痛を避け、快楽を求めたいという動機が生まれ、意志決定します。
願望というのも、「こうしたい(こうしたくない)」という強い欲求から起こっています。
当事者でないと、全体像を見渡せる。
ドラマを観る視聴者目線だと、当事者ではないので感情移入しても余裕があります。
だから、登場人物たちのプライドや悲しみといった感情の奥にあるホンネ、心の動きも見てとれます。
本人だけではなく、相手のこととか、状況とかの全体像も見えるから、「あぁ、なんで未練があるのに、そんなこと言っちゃうのー」とか、「そこであぁしたら関係を修復できるのに…」と感じます。
じゃあ、自分の現実でスマートに振る舞えるのかというと、そうはいかない。
当事者になってしまえば、主人公たちと同じように、強い感情にはトラップされ、視野が狭くなる。傷ついたり傷つけたり、誤解したりされたりと、うまくいかないこともあります。
そこで、ジャーナリングで内観したり、マインドフルネスで今の感覚に○も✖️もつけない練習が、世界をありのまま傍観するために役立つのでしょう。
ジャーナリング:自然なあなたが一番美しい。ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法。
マインドフルネス:マインドフルネスで怒りをおさめ、心と体の栄養を深く味わう生き方とは?
思考・感情にトラップされてしまう時間では、感性が磨かれる。
とはいえ、自分の不器用さとかじれったさとか、うまくいかなささ。
それらを経験するからこそ、「ある、ある。それそれ。あるんだなー。やっちゃうんだなー」と共感して、物語の世界に投入できるところもあります。
自分の日常や経験と照らし合わせて描かれる人物の生き方に共感したり、他人事ではないと自分を見つめ直せる。だからいつも心やすらかではなくても、平坦ではない日常もまた、感性を磨くための大切な肥やしになるのだと思います。バカだなー、大変だったなーと思いつつも振り返れば、とある人生の動きと愛しいところもあります。
参考:ありのままの自分で本当に幸せになれるの? マガジンハウスからホームレス編集者へ。アメリカ先住民ナバホ族の集落で死にかけて学べた私の幸福学。
本当に決心したことは、必ず実現する。
そんなふうに紆余曲折する私たち。物体であると同時に、異なる周波数を持ったエネルギーだと言われます。目に見える肉体も、目に見えない思考も、感情もすべて、エネルギーという意味では同じです。
そしてバシャールは、
その人が本当に決心したこと、心の底から決めたことは、必ず実現する
―『未来は、えらべる!』より
と、断言します。本当に信じていることが、実現すると。
『ユミの細胞たち』では、主人公たちが「願い」どおりではないプロセスをふみます。
けれども、ぐっと状況を俯瞰してみれば、うまくいっていないように見えて、彼らは「思った」とおりに振る舞い・決定し、そう決めたとおりに現実が形づくられていることがわかります。
成功していないと自分は愛されない、と思えばそうなるし、
本当は自分との関係性を一番にしたいと思えば、そうなっていくといったように。
とくにスピリチュアルがテーマのストーリーではありません。
でも、登場人物たちの物の捉え方、振る舞いをみると、そこに宇宙理論が見てとれます。この作品では、主人公たちの欲望(欲求)を擬人化してみることができるので、なおさらそれがわかりやすい。
ボームの思考論とは?
「思いが現実を形づくる」のからくりを、科学的に説明してくれるのが『ボームの思考論』です。難しいから購入して以来、少しずつ読んでいます。
著者は、理論物理学者デヴィッド・ボーム。彼がカリフォルニアのオーハイで50名のセミナー参加者たちと交わした3日の対話をまとめた本です。
葛藤するのは、過去のパターンを繰り返しているから。
彼は、私たちが葛藤するのは、ほぼ自動的に思考(個人だけでなく、集団的な思考も含む)や知識の型を繰り返しているためだといいます。
つまり無自覚でも、記憶や過去にトラップされているということ。
アメリカの有名な内科医ディーパック・チョプラ博士の研究でも、私たちの思考(1日に6〜9万回程度)の9割は、前日の繰り返しだといわれます。
1秒につき1回から2回弱思考する計算になるので、ほぼ無自覚に自分を同じパターン(思考枠)にあてはめて未来を定めてしまっていることになります。怖いですね。
これが頭で現実を変えたいと思っていても、実際には変えられないという理由です。
それは条件づけのようなもので、自己催眠にかけているともいえます。
そこでボームはこのようなわかりやすい例をあげます。
歯が痛くて歯医者にいくとします。
歯医者では歯に穴をあけたり、抜いたり、肉体の一部を傷つられたり奪われる可能性があります。
でも、「そうすることで歯が腐ってしまったり、もっとひどくなることを防止できる」と
必要なことだと信じているので、望んで傷つけられようとしています。
一方で、誰かの言動で気分が悪くなった場合、「あの人が私を傷つけた」「私は傷つけられた」となります。それを必要なことだとは、到底思えません。
虫歯治療のようには、捉えられないのです。
けれども『ユミの細胞たち』をオーディエンスとして観ているときのように、
自分の欲望の細胞
自分を傷つけた人の欲望の細胞
そして状況などを
ずっとずっと俯瞰してみれば、感情のトラップ越しとはまた違ったストーリーになるかもしれません。
とはいえ、これは犠牲的な関係性をすすめたり、それが良いといっている訳ではありません。
ただ、私たちはほぼ自動的に物事を解釈していて、その認識でしか現実を捉えてはいないということ。その一例をボームがわかりやすく挙げているとご紹介したかったんです。
決めることで、記憶や過去から自由になれる。
では、どうすれば記憶や過去から自由になり、現実を大きく動かすことができるのでしょうか。
ひとつには、先に挙げたマインドフルネスなどで、自分の感じ方や状況をありのまま「自覚」することです。
つまり、今の自分(感じていること、考えていること)に注意を払うということ。そして当たり前のパターン化された解釈をちょっと疑ってみること(いったん良い悪いという判断を緩める)。
参考:ハイヤーセルフとつながるとは、「ゴミから宝物が生まれる」を深く知る体験。
さらにここで、ボームが挙げる、興味深い心理実験をご紹介します。
実験では、動物にモルヒネなどの中毒性がある注射を打ちました。
2つグループがあって、一方ではボタンを押すことで自分で注射することを要求できるようになっています。もう一方は、自分の意志とは関係なく、人から注射されます。
依存状態になった後、薬物投与が差し控えられました。
両方とも依存から抜けた後、自分に注射するためのボタンを押すことができたグループ(=自分で行動を決められたグループ)のみ、たとえ注射されなくてもボタンを押し続けたそうです。
薬物中毒の話なので、印象の良い例ではありませんが…。
あえて例に挙げた理由は、自分で「こうしたい」と決めて実行すると、その後もどんな状況であれ、自分の意志を行使できるようになるということ。
現実創造のネックになるのは、タイムラグ(時差)です。
エネルギーが物質化するために必要な時間があり、そのため「やっぱり叶わないじゃん」と諦めて、元通りの行動や思考に戻ってしまいがちだからです。
ところがバシャールは、その人が本当に決心したこと、心の底から決めたことは、必ず実現すると断言します。本当に信じていることが、実現すると。
つまり皮肉にも、変わらないと心の底から信じていることが、「思った」とおりに実現するのです。
そこで、過去の記憶から現実を歪めて捉えてしまうという私たちの傾向性。ボームが挙げた心理実験より、これを逆手に取れるのではと思ったんです。
自分の意思で決めて実行し続け、心の底から「そうだ」と信じ込んでしまう。すると、その後の状況がどうであれ、疑いなく行動を取りつづけられるという結果だったので。
バシャールのいう、
集中して忘れる
集中して忘れる
集中して忘れる
ということです。
つまり
決めて実行して忘れる
決めて実行して忘れる
決めて実行して忘れる
とも言い換えられます。
今回は引き寄せや宇宙理論で語られる「決めること」が現実を大きく動かすということ。「ボームの思考論」から読み解いてみました。
現実は、私たちがどう解釈し、反応するかで決まります。観念が強化される形で目の前の出来事が繰り広げられるのです。
すべては願いどおりではなくても思いどおりに叶っています。思いを自覚し、自分で心の底から決めることで、思いは強い願いとなって、現実を形づくるのだと思います。