今日、私が住む街は雨でした。冷たい雨の日に、部屋で温かいミルクティーを飲んでいると、無性に豊かだなぁ、ありがたいなぁと感じます。
私は人の家を転々とする生活が長かったので、雨露をしのぐ屋根があること。
また温かい部屋で過ごせることを、とってもありがたく感じます。
そんな暮らしをする前は、感じられなかった大きなありがたさや深い喜びです。
参考:社員からホームレス編集者へ。居候生活と禅修行で始まったひとりベーシックインカム制度。4年間のわたしの“家賃ゼロ”という生存計画について(前編)
極端な話に聞こえるかもしれません。
けれども、
辛いなぁ、寒いなぁ、苦しいなぁという気持ちを感じたことで、その逆の、
心地いいなぁ、あったかいなぁ、ありがたいなぁという気持ちを深く強く感じられるようになったと、心から思うんです。
宇宙は、本当に完璧にデザインされていると感じます。
だから、全部ちゃらになるんだなぁと。
良いことも悪いことも、全部必要な体験になるんです。
時間が経てば、すべて肥やしになるんです。
20世紀の傑出した心理学者100人にも選ばれた、感情研究の権威ポール・エクマン博士。私が学んだ先生の先生です。彼は、どんな感情も私たちに必要だと証明しました。
彼はまったく西洋文化に触れないパプア・ニューギニアの秘境に出向き、そこで暮らす原住民を訪ねました。そして彼らに「怒り」「嫌悪」「恐れ」「幸福感」「悲しみ」「驚き」の6つの感情(表情)を顔に浮かべたアメリカ人の顔写真を見せ、それぞれどんな気持ちかと尋ねました。
その正解率は80〜90%。そこで博士は、感情は文化や人種に関わらず普遍的で、体(表情筋)を使って同じように表現するとしました。そしてそれは、ダーウィンの進化論から、どんな感情も私たち人類が命をつなぐ助けになったからだと結論づけました(※)。
たとえば私たちは腐りそうな牛乳のニオイを嗅いで、「クサッ!」と嫌悪感を持ちます。不快な感覚で感じると嫌な気持ちになります。でも、そこでストップがかからないと、私たちは腐ったものや汚物を口に入れて病気になったり、下手すれば死んでしまうかもしれません。
また、嫌な感情の怒りや悲しみ。
怒りは、第二感情とも呼ばれ、その根っこにあるのは悲しみです。
悲しみは、何か大切なものを失っていることを私たちに教えてくれています。そこで、怒りや悲しみを感じないようにすると、怒っていたり悲しんでいる自分が大切にしたいもの、あなたという命の領域を失うことにもなりかねません。
感情そのものは、ニュートラルな存在です。嫌な気分も、良い気分も、自分らしく、心地よく、この世界を安全なものにするために、「今、自分は何ができるのか」と、行動を取るためのガイドなんです。
参考:自然なあなたが一番美しい。ドス黒い感情やダメな視点にも価値がある! 不安、怒りを「書いて」陽転させる方法。
感じないようにすることで、私たちの大切なものを失ってしまいます。
喜びや豊かな気持ちも失ってしまいます。
「失感情症(アレキシサイミア)」という病気があります。
思考で気持ちを抑えて、感じられないようにする病気です。
嫌な気持ちだけでなく、喜びやワクワクといった、良い気分を感じる心も鈍化し、なにがやりたいのか、自分の望みがなんなのかもわからなくなってしまいます。
その結果、うつ病、適応障害、アルコール依存症、摂食障害、買い物依存症などになったりもします。
内側の声が無視された結果、渇望した心は外側に向かい、その渇きを満たそうとします。
けれどもそれは本当に欲しいものではないので、いくらたっても満たされないのです。
参考:ハイヤーセルフと繋がる方法とは? 問題を解決する、自分を超えた答えのダウンロード法
感情が本当に必要としていることは、キチンと存在を認めて、感じられるということです。
感じきれば、感情は安心して終わります。
でもそれは自分以外は、できません。
嫌な気分だからといって、他の誰かに代わりに感じてもらうことは、できないのです。
一般的に、豊かさというと一番に、お金がたくさんある状態が思い浮かびます。
実際に辞書でその意味を調べてみると、
1 満ち足りて不足のないさま。十分にあるさま。
2 経済的に恵まれていてゆとりのあるさま。
3 心や態度に余裕があって、落ち着いているさま。-デジタル大辞泉より
とあります。
金銭的な豊かさを挟むようにして1番目と3番目に挙げられるのは、
豊かさを感じたときの心の状態です。
それは、満たされていて、余裕があって、落ち着いている様子です。
引き寄せの法則では、抱いた感情が現実を映すと言われますよね。
言い換えれば、思ったり感じたりした気持ちが現実になるということ。
豊かな気持ちでいれば、豊かな現実になるということです。
では、豊かじゃない気持ちのときは、感じてはいけないのでしょうか。
そうではありません。
その気持ちをナビにして、ありがたいなぁ、豊かだなぁと思う方向に向かえばいいのです。
そこで私が悲しみや怒りを感じたときにすることは、まずその気持ちを素直に認めることです。
あぁ、私は今悲しいんだなぁ。腹が立っているんだなぁと認めます。
誰がなんといっても、ありのままの自分でいいのです。
参考:ありのままの自分が認められず、死にかけたりと遠回りばかりした私の話。
それで、自分の内側の声に耳を澄ませます。
内側の声とは、具体的に体や呼吸の感覚のことです。
胸がギュッと締めつけられるようだったり、下腹部がざわざわしたり。
呼吸のリズムも浅く、十分に息を吐いてちゃんと吸えていない状態だったりします。
それに気づきます。
安心して自分の気持ちに素直になれる空間を自分に与えてあげます。
その後で、まずゆっくりと息を吐きます。
吐ききったらちょっと息を止めて、胸とお腹を広げるようにして息を吸います。十分に息を吸ったら、胸とお腹の力を軽く緩めて、最後にお腹を絞って息を吐き切ります。
息を吐くときは、いつでも体の余分な力を抜いてあげます。
このプロセスを瞑想という人もいるでしょう。
瞑想とはいま行っていることに気づくことです。
手を洗うときの水の冷たさ、指に触れる水圧、石鹸の香りを感じることも瞑想でしょう。
レジやエレベーター、信号を待つときに、一つ深呼吸して息を観察すること。
これも瞑想になります。
自分の気持ちや感覚に気づいていることも、瞑想です。
私の先生たちは、瞑想とはまじめくさった面持ちで、大英博物館のブッダ像のような美しい蓮華座のポーズで行うものに限り、ではないと教えてくださいました。
たとえば、私に初めてマインドフルネス瞑想を教えてくれたティク・ナット・ハン禅師。
彼は、瞑想に必要なのは、微笑むことだと教えてくださいました。
そこで微笑みに向かうような瞑想を繰り返します。
参考:あなたに最適な男性性エネルギーと女性性エネルギーのバランスを調整する方法
その先に、おのずとなにかやりたくなったこと(好きなドラマを観たり、本を読んだり、温かいお茶を飲んだり、猫を撫でたり)が出てきたら、それを行います。
なにもやりたくなかったら、なにもやりません。
やらない自由を自分に贈ってあげます。
安心して自分の気持ちに素直になりましょう。
痛みも喜びも、悲しみも豊かさも、お互いを感じることで生まれるものだから。