最近読んで一番感銘を受けたのは、『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』という本です。生物学からこの世界のすべての生き物がどのようにつながっているかという謎に迫っています。スピリチュアルや心理学、仏教学から熱意が持つ力、願いの実現についてお話ししてきましたが、生物学という科学的側面からはどう語ることができるのでしょうか。
本のなかで雑談的に語られるキリンの首が長くなった理由が、とくに私の好きな話です。
キリンの首が長くなったのは、何世代にもわたって、木の高いところにある葉っぱを食べようと首を伸ばし続けたからなんだそうです。
つまりそうしたいという熱意、強い願いが首の長さという物体を変異させたということ。
最終的にお腹がいっぱいになって栄養が十分行き渡ったキリンのほうがより体力があって、生殖能力もあったので、長い首を持った個体に支配されるようになったとか。
このプロセスは自然淘汰と呼ばれます。
『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』
ノーベル生理学・医学賞受賞、細胞生物学者のポール・ナース著。最近読んだもののなかで、一番感銘を受けた本。難解な生物学、遺伝子の仕組みから「命とは何か」をわかりやすく読みやすい短文でまとめて素晴らしい。竹内薫さんの翻訳も秀逸!本書はポール・ナースの生涯で一冊の一般向けの科学書。訳者の竹内さんの推論によれば、彼が次世代のために、科学や医学的側面から命とはを知ることで、人類が悲惨な状態に陥らないために書いたのではないかとあり、深く納得。
生物学においても私たちが思う以上に、私たちの「こうしたい」という願いには強い影響力があるのですね。
思うに私たちのなかに半導体のようなものがあって、強い意志がその配線のスイッチをオンにしたりオフにしたりして、ときにキリンの首を長くしたりもできるようです。
それをエピジェネティックス(後成学)と呼ぶそうです。
だから願いを持つこと、意志の方向性を定めることはとても大切。
昨日の日本経済新聞にも面白い記事がありました。
オーストラリアの新興企業が支援する研究所が発表した論文の話です。
それによると、研究者たちが幹細胞(ステムセル)から作ったディッシュブレインというチップ上の脳細胞にゲームをさせたそうです。
そして、うまくプレイできているとディッシュブレインにフィードバックを返すと上手になっていったとか。逆に自分がいかに上手にプレーしたかのフィードバックがないと、意味のある学習が起きなかったそうです。
たとえ実験室で作られた細胞にも意志のようなものがあって、
フィードバックがないともっと上手になりたいというやる気が育めなかったともいえますよね。
つまり、強い願いを持つと同時に、自分を「ダメだ」「もっと努力せよ」と追い込むよりも、自分を鼓舞することってとても重要。どれだけ自分がうまくやれているのかがわからなければ、行動を見直すこともやる気を持続させることもできません。
実現した状態と一致するような熱意、つまり高い生命エネルギーを維持するためにも必要なんです。
参考:ハイヤーセルフと繋がる方法とは? 問題を解決する、自分を超えた答えのダウンロード法
そこで願望実現や引き寄せの法則では、焦りや不安が生じるなら、願いを手放せ、望んだことを忘れろと言われます。むしろ黙々と淡々と目の前のことをやりなさいと。
参考:「強運の法則」が明かす、全宇宙が味方する成功と豊かさに必要な8つの条件とは?
では、どんな考えを持つことで、願いが実現するようなリラックスして高い生命力を維持できるのかと考えてみました。
そこで思い出したのが、アメリカで出会ったギフトエコノミーに生きるニップン・メッタさんの以下の言葉。
「ギフトの輪は一対一の与え合いじゃないんです。大勢と大勢の与え合い。
だからあなたが与えたものがどこで浮上するのかはわかりません。
もしかしたら巡り巡ってあなたの子どもに与えられるのかもしれない。孫かもしれない、または従兄弟かもしれません。
誰にいつ与えられるかはわからないのです。
でもそういうことは重要じゃないんですね。
大切なのは優しさの波紋を起こすこと。
どんなに小さな優しさでも伝播していくからです。
逆に言えばいじわるも同じ。
ガンジー、マザー・テレサ、ダライ・ラマなど優しさの波紋を広げながら暴力的な行為を受け止めていった人たちがいます。
私もそういう人になりたい」。
ニップンさんについて:代金の無い料理店『カルマ キッチン』 創設者・ニップンさんのギフトな生き方。
ギフトエコノミーについて:ギフトエコノミーは資本主義経済とも両立できる。服部雄一郎・麻子さんに教わる、豊かなお金の使い方と自然の恵みにならう暮らしのはじめ方(前編)
強い願いを持ちながら、我を無くした状態です。
このように
場合によっては、あなたの願いはキリンやギフトエコノミーのように自分の生涯では現実化しないかもしれない。
子どもや、孫や、あるいはひ孫の世代で突然現れるのかもしれない。
私のように子どもがいない人も「じゃあ無理だ」と悲観しなくても大丈夫です。
私たちはみんな集合的無意識でつながっているので、あなたの想いはそれにもっとも近しい波動を持つ相手(グループソウル)に受け継がれて、ときが熟せば現れます。
必ずしも血縁である必要はないのです。
参考:ハイヤーセルフの眼差し、あなたと私の集合的無意識を同時に癒す「セルフ・コンパッション」の力とは?
本のなかにも哲学者イマヌエル・カントのこんな言葉がありました。
「生きている身体の各部位は、全体のために存在している。そして、全体は各部位のために存在している」。
この考えは、私がティクナットハン禅師に学んだ、仏教の縁起の教えからくる造語interbeing(相互共存)にも通じています。
水面に咲くハスの花は、水面の下の泥に支えられ、根はひとつにつながっているということです。
ハスの花のような高い美しい願いは、「いつか今か」と焦るよりも、「いずれなんらかの形で必ず実現する(それが自分の代ではないとしても)」とリラックスして持ち続けたらいいんだと思います。
そんな強い熱意に支えられた願望は、ときが熟せば、必ず叶います。